ウチダカズヒロのブログ

最近は読書感想文を書いてます。オススメ本を教えてください。読書感想文のご依頼あれば、読みます(たぶん)。kazgeo@gmail.com まで。

読書感想文「リボンちゃん」寺地 はるな (著)

この時代の気分を明確に表した傑作だ。 リボンちゃんを通じて、寺地は、薄ぼんやりとしたグラデーションのある感情を言葉にしていく。しかも、それを伝達の道具としてではなくて、時代を表現するように、だ。 実は、世の中は、こんな「気分」が潜在している…

読書感想文「東大首席が教える超速「7回読み」勉強法」山口 真由 (著)

「勉強しなさい」と言われ、行う作業・行為とは何か。書き取りか、副教材・ドリルの斜め読みか、ワークや問題集をひたすら解くことか。違う。「勉強」とは、まずは「教科書」を7回、読むことだ。これこそが勉強そのものであり、ここから始まるのだったのだ…

読書感想文「うらぎり長屋」高瀬 乃一 (著)

逆境である。「何の因果か」ではなく、不運や己れのしくじりが引き起こした結果ではあるが、いま、うらぶれた長屋に住む面々の話しだ。 わだかまりである。どーしてこーなっちゃうのかなー、である。なんでだよー、だ。アゲインストは、いつ終わるかはわから…

読書感想文「バブルの後始末 ――銀行破綻と預金保護」和田 哲郎 (著)

金融とは、いかにも政治である。本書においては。ただ、本来、そうあっちゃいけない。 金融システムを維持するために、日銀特融や公的資金注入などによりシステム不全を未然に防ぐことはどうしても必要であり、モラルハザードを声高に叫び経営責任をことさら…

読書感想文「「新」富裕層ビジネスの教科書 1000人の富裕層から学んだ秘密の営業術とマーケティング術」岸田 大輔 (著)

あなたはお金持ちを相手に商売をしたいか。 それはどうやら、自分の人生で、自分が自分自身にリーダーシップを発揮することを選択することになる。誰彼から指示命令を受けるだけの人間では話しにならない。自分自身のボスは自分であり、そのことを選択した者…

読書感想文「わたしのおとうさんのりゅう」伊藤比呂美 (著)

薄れて朧げになっていく家族の記憶を、娘が語る話しだ。よくもマァ、ここまで掘り下げたものだし、向き合ったものだ。 ヤクザと芸者から足を洗って堅気として生きる両親のことを、記録と幼少の文学体験とともに辿る。大好きな父とはいえ、記録された父の記述…

読書感想文「絶対泣かない」山本 文緒 (著)

「きっかけ」の可視化である。そんな一大事は起きない。モブの人生とは平坦であったとして、それでも冠婚葬祭、成長や老化はある。そこに出会いも別れもある。大げさなことではなくても、そうした出来事が人をつくる。とは言え、些細な出来事は流され、消え…

読書感想文「女二人のニューギニア」有吉 佐和子 (著)

思い出すのは、「なるほどザ・ワールド」であり「世界ウルルん滞在記」だ。リポーターが世界へ飛び出し、現地を伝える。我々は、世界の本当を知った気になった。兼高かおるが作り上げられた「世界」に満足できなくなったお茶の間が求めた「海外」だった。当…

読書感想文「大きな鳥にさらわれないよう」川上 弘美 (著)

ナウシカのオマージュである。 シュワの墓所の主が登場し、絶滅種としての人類が描かれる。 繁栄と没落を神の営みと絡め書き表したかったのは何故だろうか。東日本大震災から3年後に上梓された本書は、震災後の社会へのアンサーソングであったのだろう。当…

読書感想文「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」奥泉 光 (著)

「教えてくれ。ジンジン!」と叫びたいオジさんは、日本に相当な数がいるのではないか。 作家の手により、いじられる対象である主人公・クワコーこと桑潟幸一の窮地。掛かる事態を見抜き、情けないクワコーの困難を救うべく、切り札をスパッと出すホームレス…

読書感想文「我が身を守る法律知識」瀬木 比呂志 (著)

紛争の解決の場面において、加害者も被害者も、しばしば能面のような表情を持たない面倒くさがりな事務的な処理によって、ひどく非人間的で杓子定規な扱いを受けてしまう、ということだ。それも、権威性を帯びて。 さて、どうやって「我が身を守る」のか。結…

読書感想文「役所のしくみ」久保田章市 (著)

地方自治法の教科書であり、地方行政の外側から地方役場に飛び込んだ良書のルポだ。 何より、実例に基づいていてわかりやすいし、ストレートな表現が面白い。市長を3期つとめた本人が気取らず、正直に書いている。本人自身が書いているのがわかる。とは言え…

読書感想文「ホワイトカラー消滅: 私たちは働き方をどう変えるべきか」冨山 和彦 (著)

時代からちょっと早い冨山さんの熱いメッセージだ。それにしても、まいったな。冨山さんが言いたいのは、世の中の経営能力不足問題、ビジネス戦闘能力不足問題となるのではないか。あるいは構想力、問題発見能力が足りてないとの指摘か。 個々の被雇用者は、…

読書感想文「過疎ビジネス」横山 勲 (著)

もう、結構な毒はまわっているのではないか。 人口維持が難しい消滅可能性自治体と、その中で「地方創生」の核となるはずなのにヒト・モノ・カネが全く足りず、派手に話題が盛り上がり評判を呼ぶためのことなら、とにかく何でもいいからなんかやれ、と踊らさ…

読書感想文「30の都市からよむ日本史」金田章裕 (監修), 造事務所 (編集)

知っているようで案外と知らない都市の地誌である。もちろん、全国の天気予報で毎日伝えられる街もあれば、そうじゃないところも紹介される。でも、メジャーかどうかより、歴史のトピックが立った場所かどうかが、30の選に入ったか漏れたかの違いだ。 いくつ…

読書感想文「バリ山行」松永K三蔵 (著)

ライブってことだろ。生きてる!っつーか。 一人でいるとき、もしくは周りに人がいてもどうしようないとき、自分の息が聞こえる。目の前に人がいて、その人のことを何とはなしに気にしていると、互いに喋っていなくても、自分の呼吸の音は聞こえない。もしく…

読書感想文「この国の戦争 : 太平洋戦争をどう読むか」奥泉光 (著), 加藤陽子 (著)

粉薬を飲むごとき煩わしさだ。苦い匂いや味が鼻と口に広がる。勢いよく飲めば咽せ返る。そんな一冊だ。 日本とは、なかなか人を得ない。つくづく、そう思う。一角の人物が大きな役目を担わない。結果、中途半端な痴れ者がのさばり、碌なことにならない。軍人…

読書感想文「スタンフォード大学の人気教授が明かす 教養としての権力」ジェフリー・フェファー (著)

権力とは何か。成功とは何か。 辞書では、権力とは「他人に強制し、服従させる力」であり、結構どぎつい。同じく、成功とは「富や社会的地位を得ること」となる。なかなか生々しげなグリーディだ。 だが、いったん、定義は置いておけ。「あの人は力がある」…

読書感想文「神さまショッピング」角田 光代 (著)

テーマは信心である。言い方を変えれば「ホンマかいな」がテーマだ。信心の濃淡や距離である。しかも、宗教そのものではないのだ。宗教っぽい儀礼、祭礼、習わしへの染まらなさなのだ。染まっちゃってる人は無垢であり、素直さであり、羨ましげである。何や…

読書感想文「覚悟」加賀山 卓朗 (翻訳), フェリックス・フランシス (著)

まったく、スコットランドヤードは何をやっているんだ。いちいちイライラさせる。そんなことでいいのかね。まったく。そして、小説に出てくる悪党とは、なんで手強いのか。 それにしても、だ。人生には義父である提督とチコが必要だ。「覚悟」できるのも、こ…

読書感想文「なぜ社会は変わるのか はじめての社会運動論」富永 京子 (著)

社会における「運動」を分析して考察することについての本であり、その理屈だ。 社会運動を仕掛け、世の中や世間に賛同や同意、関心が広がり、議論が制度や施策、予算や人員配置、規範として広がることを、その成功だとすると、割と世の中は動き、変わってい…

読書感想文「経営者になるためのノート」柳井正 (著)

柳井正さんとは強烈な人だ。'00年代、日経ビジネスや日経MJに取り上げられ始めた頃から、直言して怯まず、堂々と(本人が思う)正論をズケズケと言う人であり、暗く鎮鬱でどんよりとしたバブル崩壊とリーマンショック以降の日本に、すごい人が出てきた、とい…

読書感想文「移動する人はうまくいく」長倉 顕太 (著)

「うまくやりたい」のか、自ずと「うまくいく」のか。 女神が問う。あなたの落としたのは、金の斧ですか?ノー。銀の斧ですか?ノー。本人の斧を見せ、イエス。最初っから、とっとと見せろや。金?、銀?いらんがな。重たいわ。自分の斧でさえ、手を滑らせて…

読書感想文「日ソ戦争-帝国日本最後の戦い」麻田 雅文 (著)

大国をどう御すか。放っておいて好き放題にさせると、蹂躙するため襲撃してきかねない。それに当たっては、自分たちが合理的に数字で考え、理屈でもって話しができなくてはならない。油断してはいけないのだ。相手に対してはもちろんのこと、我々の意思決定…

読書感想文「戦後入門」加藤 典洋 (著)

テーマは「対米従属」である。2025年の夏、少なくとも、ポーズだけでも対米従属させられていない国はあるか。負けてるフリだけでもしてくれ、そーしねーと、ことが前に進まねえんだよ、事務方は大変なんだよ、とホワイトハウスからのぼやきが聞こえてくるよ…

読書感想文「敗戦後論」加藤 典洋 (著)

「負けた」と言ってないじゃないか。あれだけ、「勝つぞ」「勝つぞ」と言ってたのに、だ。キッパリはっきりしようぜ。リスタートって、そういうもんだろ、が通底している。まぁ、そう言いたかったのだ。 日本とは、老人の知恵の国だ。年寄りを敬い、その話し…

読書感想文「豊田章男が一番大事にする「トヨタの人づくり」ーーートヨタ工業学園の全貌」野地秩嘉 (著)

誠実であろう、実直であろうとする集団である。トヨタは。 それにしてもだ。人間力という言葉が何度も繰り返し出てくる。普段、使うか?むしろ日常で人間力なんて使われたら、身構える。そんな言葉を強調されれば、訝しみ疑う。まして真顔で言われれば、疑問…

読書感想文「民事裁判入門 裁判官は何を見ているのか」瀬木 比呂志 (著)

争う、とは何か。 互いに争点、論点、論旨を明確に持ち、言語滑らかに主張を切り結ぶ、なーんてことはないのだ。なんか気に入らない。とにかく腹が立つ。この際だから、白黒はっきりつけようじゃねーか。じつはこんなところが始まりだったりする。 では、持…

読書感想文「対馬の海に沈む」窪田 新之助 (著)

ある地方の不正事件、不祥事である。 閉じた人間関係の田舎の風景でもあるし、肝の小さい連中が寄ってたかっておこぼれに預かろうとし、無心した気持ちの悪い話だ。つまり、巨悪は出てこない。薄汚い小物がうようよいて、その時だけの私利私欲にありついたの…

読書感想文「ヨシモトオノ」吉本 ばなな (著)

メメントモリである。 死はあるのだ。周りにホントは。当たり前に。だが、隣り合っているように当たり前なはずの死を、我々は意識の外に置いている。無いことを当然としている。で、死が発生するとどうなるのか。所定のプロセスを経て、また、無かったかのよ…