2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

読書感想文「「松本清張」で読む昭和史」 原 武史 (著)

現在と地続きの「昭和」である。令和にとって平成が前例となるが,その平成に色濃く影響したのが,昭和である。昭和とは何か。ずっと続いたのが,昭和である。昭和という元号があまりにも長く続いたせいで,昭和が当たり前になり過ぎて,年の表記が昭和であ…

読書感想文「アンと愛情」坂木司 (著)

主人公・アンは成長したか。高校を出て3年。デパートにテナントとして出店する和菓子屋のアルバイトとして,ただオーダーの入った商品を詰めて会計するのではなく,商品としての和菓子を愛するが故に,客との間のコミュニケーションや商品知識を深めながら…

読書感想文「手の倫理」 伊藤 亜紗 (著)

インターフェース論である。境界がある。自分と他者の境目である。その物理面での境界を知り得る「触覚」がテーマなのである。 触覚が伝える情報量の多さとは,視覚とはフェーズが違う。温度,圧,面積,水分などなど。そして,それらが時間とともに絶えず変…

読書感想文「一橋桐子(76)の犯罪日記」原田ひ香 (著)

主人公・桐子その人がやけにくっきりと浮かび上がる。目の前にいるようだ。これまでの人生での社会経験を経た上品な佇まい。八千草薫か。 原田ひ香は,またしても,社会の矛盾,デタラメ,不公平を描く。そしてそれらが絡み合う不幸を。歳を取るーそれは,体…

読書感想文「空洞のなかみ」松重 豊 (著)

あぁ,そうか。一つの道を歩んできた人には,その道すがら見てきたもの,知らずに登った山坂から見える眺めが,言葉を連ねさせるのだな。そんなことを松重豊の短編小説に思う。 妄想とも夢の断片とも思わしき正体のわからぬ状況を,テレビや映画の「現場」の…