東京大学の宮田秀明教授の人気コラム【宮田秀明の「経営の設計学」】を読んだ。いつも,とても刺激を受けるコラムで,今回はとりわけ日本の「人を育てないマネジメント」がテーマでとても興味深く読んだ。
ただ,今回はテーマそのものだけではなくエンパワーメントの言葉の意味を理解する機会にもなった。
トップがエンパワーメント(権限委譲)の極意や、革新は実は若い人の力を生かすことから生まれたこと、イノベーションは全く不連続に起きるものだということなどを知っている人ならいいのだが、そうでなければ、マネジメントに失敗し、暗い結末を迎えることが少なくないだろう。資金を投じたプロジェクトの失敗は確かに痛い。だが、プロジェクトの失敗よりも、実は失敗によって人を育てられなかったことの方が何倍も痛い。
へぇ,権限委譲の意味もあったのだ,と思ったし,なるほど,その意味だとストンと落ちるや,と思った。
エンパワーメント 【empowerment】
(1)力をつけること。また,女性が力をつけ,連帯して行動することによって自分たちの置かれた不利な状況を変えていこうとする考え方。
(2)権限の委譲。従業員の組織内での力を伸ばすためや,開発援助において被援助国の自立を促進するために行われる。
とあるように,「力をつけていく」の意味のほかに「権限の委譲」の意味。それは,
エンパワメントという単語そのものは「能力をつける」「権限を与える」という意味である。ただし、従来のさまざまな考え方の枠組みが、障害者の「能力」や「権限」を訓練や指導によって後から付加されるものとみなしてきたのに対して、エンパワメントという考え方のもとでは、「障害者には本来ひとりの人間として高い能力が備わっているのであり、問題は社会的に抑圧されていたそれをどのように引き出して開花させるかにある」と考えるのである。
つまり、社会的な抑圧のもとで、人間としての生き方が保障されてこなかった障害者自身に力をつけて自己決定を可能とし、自分自身の人生の主人公になれるようにという観点から、あらゆる社会資源を再検討し、条件整備を行っていこうとするのがエンパワメントという考え方であり、手法である。
で書かれている,もともとある力を開花させるために,自分自身で決定させるような権限を持たせるという意味において「権限委譲」なのだ。よって,
エンパワーメント Empowerment
現場の自主性を高め、パフォーマンス向上につなげるために権限を与える(Em+Power:パワーを与える)考え方。
のように説明される意味で用いられるようになったことがわかる。ちなみに,
# 開発援助や女性運動の分野でよく使われる。能力を引き出す側面に焦点を合わせる場合は「能力開化」,権限を与える側面に焦点を合わせる場合は「権限付与」と言い換えることができる。
# 権限の大きいところから権限の小さいところに,権限を移すことを指して使われることもあり,その場合は「権限委譲」という言い換え語が適切になる。
と言い換え対象であることも覚えておこう。