事故る手前だった。


 ひさびさにクルマ通勤をした。寒いし,昨晩焼いたパンを雨に当てずに持っていきたかったし,ね。これが,夏タイヤに交換してからというもの,ずっと,床下から異音が響いていて,今朝もノイジーサウンドを届けてくれていた。ガゴンガゴンと鳴るのだ。まったく,なっとくがいかない。音もたまに違う。ガゴ〜オォ〜〜ン。と間抜けな音に鳴ったり,ガン!バンッ!とものがあたったような音がしたりしていた。
 夕方,大先輩のお宅へ届け物をし,道中,異音にいらつきながら,到着する。何がカッコワルいって,大先輩宅を出る際に,必ず見送りに外へ出てくださる。そこで,クルマがガゴンガゴン言っていたら,ダメじゃん。はずかしー,しぬー。そんなことを思っているもんだから,いーかげんにしてくれよー,といらつく。実際のところ,低速では異音は生じないので,今日の去り際は,私の動揺はともかくとして,そう,みっともないことにはならずにすんだ。
 つい,その後,ヴィレッジヴァンガードに寄ってしまう。本の表紙,背表紙,本への思い入れたっぷりのPOP,あぁ,至福の時間。うかつにも一冊,買ってしまう。こりゃ,吉本ばななは新刊じゃなく,ブックオフ仕入れなきゃ,などと思う。ふらふらと寄ってしまったヴィレヴァンだが,この駐車場に止める直前に,これまでで最大級の異音が生じていた。わーわー,やべーって。でも大丈夫。着いたから。ヴィレヴァンに。もう,やなこと忘れて♪状態なので,異音は脳内リセット。ここで目ぇ,覚ませよな,俺。
 ヴィレヴァンを出る。このまま楽しくなって,店員になっちゃいそうなのでいい加減にする。いや,棲みたくなっちゃうので。来た方向を戻る。橋を渡ろうと上り坂で異音がさらに大きくなる。とともに振動も発生。どうにか,なっちゃうって!!橋を渡りきる手前で,さすがに心細くなった頃,目の前にセブンイレブンの看板を発見。あの駐車場に止めて様子を確認しよう。異音は右側から聞こえる。これまでの間で,原因らしきはタイヤ交換。右前輪のホイールキャップを外してタイヤの確認。暗くてよくわかんないが,装着に疑問無し。なんだろう。いい加減,古くなったタイヤが劣化を起こして,ワルさしてる?それとも,ボディやサスで何らかのトラブル発生?コンビニ駐車場から発車して走り出した途端に,一層,異音と振動が強くなる。わーわーわー,どうにかなっちゃうよ!!!
 あと2キロほど走るとカー用品店があることはわかっていたが,もうダメ。恐怖なのだ。ホームセンターの広い駐車場にようやく停め,私が電話したのはJAFだった。お姉さんが言う。「自宅まで牽引するとは,○○円かかりますけど」。うっそぉ,単純に牽引されてトラブルそのものは放置されたら,自宅前でどないすんねん。そっから修理工場まで,また牽引じゃねぇか。などと思っているうちに,JAF到着。さっそく,状況確認。あ〜,鳴ってますね〜。ふーっ,オイラの幻聴ではなかったようだ。彼がトラックを近くに持ってくると言う。私には,寒いので中で待っているように言い残して。ようやく,トラックとともに戻ってくると,左前方タイヤを処置している。なんで,音はそっち側からじゃネーじゃん。むむ?タイヤのボルトを処置しているような音を題しているが,不明。
 なにやら作業を終え,彼が社内に乗り込む。「終わりましたー。左前方タイヤ,全てのボルトがゆるんでました」。へっ?「いやー,タイヤ外れて,飛んでいかなくてよかったですねー」。それじゃ,大事故じゃねーか,と思うが,となりでは特別,感情にあふれたりふざけたり言っているのではなかった分だけ,リアルだった。「タイヤ交換はどこでやられたのですか?」自宅です。自宅で自分で。思いあたるのだ。数年前にも似たようなことをした。また,なのだ。
 あの異音,あの振動。あの恐怖。ホントに事故の一歩手前だった。無理してカー用品店まで走ろうなどと考えず,勇気を持ってホームセンターの駐車場に停め,JAFを呼んだこと。そうした対処は間違ってなかった。原因をつくった自分は間違ってばかりだ。あー,危なかった。