「地方自治への挑戦」なのか


 ショッキングなタイトルのニュースを目にしたのだが,よくわからない。リンク切れしてしまうので全文を引用する。

国学力テストをめぐり、文部科学省の専門家会議が市町村別や学校別の結果をこれまでどおり公表すべきでないという意見をまとめたことについて、鳥取県平井伸治知事は「地方自治への挑戦だ」などと強く批判しました。

鳥取県は全国で初めて、来年度の全国学力テストの市町村別や学校別の結果を公開することを前提に、県の情報公開条例の改正案を県議会に提案しており、改正案は18日の本会議で成立する見通しです。こうしたなか、文部科学省の専門家会議は市区町村や学校が序列化されないよう、都道府県や市区町村の教育委員会は市区町村別や学校別の結果を一覧表にして公表しないとする方針を、これまでどおり維持することを求める意見をまとめました。これについて、平井知事はNHKの取材に対し「情報公開は自治体の条例で行われており、国の指導で縛るものでない。文部科学省地方自治の仕組みを理解していないのではないか」と述べました。また、都道府県や教育委員会の対応によっては国が調査結果の提供を一部見合わせることも検討すべきだとしていることについて、平井知事は「情報を出さないのであれば、地方自治への挑戦だ。地方自治を尊重して初めて教育が現場から活性化される。国もよく考えたほうがよい」と強く批判しました。


NHKニュース “非公表 地方自治への挑戦” 12月16日 17時50分


 地域における教育の担い手が「全国一律」の学力テストを受け入れ,たかだか,その結果の公表で「地方自治への挑戦」なのだそうだ。本来,地方における教育のあり方について,国が箸の上げ下ろしまで支持するような学習指導要領(「要領」だよ!)に右習えすることにこそ,知事はまなじりをあげて「地方の未来を担う人材育成について国に指図されるいわれはない!中央とは異なる教育を進めるため,断固,教育の地方自治をつらぬく」と言って,全国学力テストを拒否するのが求められる首長だ。全国学力テストを押しつけてくることに「地方自治への挑戦」と言ってくれるのならまだしも,全国一律を受け入れておいて,全国平均や全国の中での序列を気にしておきながら地方自治を語る愚劣さに,ほとほと呆れてしまう。
 「県民の情報」としての必要な情報公開だ,という言い方もあるだろう。しかし,それはその県が自分たちの教育行政を展開する中での自治としての教育があってのことで,国家のシステムの一部分をわけてもらって,もしくはその一部分を担っての「出先機関」のような振る舞いではないはずなのだ。
 ちょうど,アメリカの教育長官指名のニュースがあったので,比較のためにあわせて考えてみたい。

 【ワシントン16日時事】オバマ次期米大統領は16日、地元シカゴ市内の小学校で記者会見し、次期教育長官にアーン・ダンカン同市教育長(44)を指名した。ダンカン氏は公立学校再生の実績を上げており、オバマ氏は「教育改革でこの上ないほど実地経験がある」と強調した。 
 ダンカン氏はシカゴ生まれで、ハーバード大を卒業。バスケットボールの選手で、1987年から91年までオーストラリアのプロチームで活躍した。帰国後、教育事業に携わり、2001年から教育長を務めている。


時事ドットコム - ダンカン教育長官を指名=シカゴで「実地経験」−オバマ氏


市の教育長から大抜擢!と日本からだと見えてしまうが,

アメリカの教育システムでは、連邦政府は教育政策を
統括する権限がなく、教育庁はごく基本的な教育方針
を決定したり、学校設備などへの財政援助を行う機関
です。

日本と随分違いますよね!


連邦政府教育庁の方針に基づいて、州の教育委員会
ガイドラインを設定し、さらに教育局(大都市を統括)
教育庁(中・小都市を管轄)によって基本指針が定め
られます。

教育の実質的行政を担うのは学校区(School District)。
公立学校の設定を独自に行っています。


この学校区によって、随分と学校のレベルは違ってきます。


駐在員の子供は大変!〜アメリカンスクール泣き笑い〜: どこに住む?


つまり,教育とは地方が決めているのだ。そもそもアメリカには学習指導要領はない。類似のものはあっても,それは政府のものではなくて,NSFの助成を受けた各学会ごとに年齢別の教育達成目標基準をそれぞれに設けており国家が規定していない。
 教育を受ける権利の保障とは,全国一律の学力テストを強制することでも,その結果の序列に一喜一憂することでもない。この呪縛から逃れるには,どうやら,僕らはフィンランド・メソッドをちゃんと学ぶ必要がありそうだ。平井知事,いっしょにフィンランドの教育について勉強しませんか。


教育立国フィンランド流教師の育て方

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