「公益資本主義」なのだそうだよ。


 昨夕,ラジオを聞いていたらNHKの解説委員が「ハーバードビジネスクール」を連呼している。番組は「私も一言!夕方ニュース」。その「ここに注目」のコーナーで「アメリカ資本主義を超えるもの」と題して,デイビッド・ブルナーさん(東京財団研究員)をゲストに迎えての放送だった。
 株主価値の最大化を説く現状の市場に対し,いくつかユニークな提案があった。投機的な取引を抑制するため株を取得後,数年間は売却を禁じること。もしくは短期的な売買に対しては株主であっても配当を支払わないというものだ。なぜ,そうした話しとなるのか。

アメリカの資本主義は、株主と経営者が既存の価値(企業の資金)を取り合う、ゼロ・サムマネーゲームが経済の中心になっている。近年の収入格差は大恐慌以来の高水準にあり、米国経済の法人利益に占める金融業の割合は4割を超えた(リーマンショック以降は減少)。
(略)
アメリカのイノベーション基盤は弱体化している。技術の中国への外注や、リストラの繰り返しにより、従業員の知識が蓄積されず、イノベーションが生まれにくくなった。原因は、会社は株主のものという発想と、株主がゼロ・サム・ゲームを選ぶことにある。
(略)
株主価値の最大化を強調するビジネススクールの教育も、株主至上主義で洗脳されている面が多い。財務諸表は債権者と株主の視点で作られているが、これは19世紀の鉄道会社のために作られた経営指標であり、資金・固定資産が一番重要だった大量生産社会には合理的だが、従業員の能力や組織の学習能力、協力、イノベーションを起こす能力が大事な、21世紀のナレッジエコノミーにはふさわしくない。


イベント 東京大学 政策ビジョン研究センター
第15回 PARI政策研究会  09/10/22
「公益資本主義の確立に向けて」
Dr. David James Brunner(ハーバード大学ビジネススクール研究員)


このゼロ・サム・ゲームから脱却するためには,どうしたらいいのか。

ベンチャー企業は既存の価値が小さく、協力すれば将来に実現できる価値が大きいため、プラス・サム・ゲームの均衡が成り立ちやすい。社会や企業が成熟なほど、吸い取れる既存の価値が膨らみ、協力(投資)をして得られる価値は小さくなるため、プラス・サム維持は難しい。ベンチャーの世界は規制緩和をし、逆に成熟企業は規制をするような仕組みが必要ではないか。


イベント 東京大学 政策ビジョン研究センター
第15回 PARI政策研究会  09/10/22
「公益資本主義の確立に向けて」
Dr. David James Brunner(ハーバード大学ビジネススクール研究員)


そもそも,このプラス・サムとは,


両者が協力するのが一番よく、両方裏切れば一番ダメという、プラス・サム・ゲーム


イベント 東京大学 政策ビジョン研究センター
第15回 PARI政策研究会  09/10/22
「公益資本主義の確立に向けて」
Dr. David James Brunner(ハーバード大学ビジネススクール研究員)


こうしたプラス・サムを基点にした公益資本主義とは,

1970年代から普及した市場万能主義・株主至上主義の思想は、社会を犠牲にしてまで儲かろうとする不健全な経営を促している。公益資本主義の研究では近代アメリカにおける不健全な経営を分析した上、利益と公益のバランスを取り戻すための経営方式と経済制度の条件を探っている。


公益資本主義

公益資本主義とは、丁寧に設計された自由市場を活かすことによって、非生産的なゼロ・サム・ゲームを抑制して、持続可能なプラス・サムイノベーションを促す経済制度


ワールド・アライアンス・フォーラムと公益資本主義の定義


とのことだ。今後に注目のキーワードとなるのではないだろうか。