年金問題に関心のある経営者は高齢者雇用に積極的になるべき


 いよいよ3月だ。今月で学校を卒業し,社会人の一歩を歩みだす若人も多いだろうが,その一方で長年勤めた会社をリタイアし,現役生活から引退する季節でもある。いわゆる高齢者としての暮らしが始まる。
 そんな高齢者について,興味深い記事があった。

 先進国の多くが本格的な高齢化社会を迎えるなか、企業にとっても高齢者の労働力をいかに活用するかが、いよいよ重要なテーマとなってきた。そんななか、米国に、80代、90代の高齢者を積極的に雇用しながら、高い生産性を維持し、成長を続けているユニークな会社がある。スレンレス製のニードルやチューブなど特殊部品を製造するヴァイタニードル社マサチューセッツ州ニードハム)がそれだ。なんと従業員48人の約半数が65歳以上の高齢者で、中間年齢は74歳だという。
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 「体力や視力が低下して病気がちな高齢者を多く雇うのはリスクが高く、生産的でない」との指摘もあるが、少なくともこの会社はそれが正しくないことを証明している。同社は高齢者が柔軟かつ快適に働ける職場環境を提供することで従業員の士気や生産性を高め、2000年から2010年にかけて売上げを約3倍に伸ばした。


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これはスゴイことだ。人口減少社会,そして超高齢社会と言われるが,80代や90代の高齢者が活躍しだしたら,生産年齢人口そのものが増えることになる。つまり,トータルの人口は減少したとしても,それを支える人口の比率は減らないことになる。

 たしかに高齢者は病気などで休みがちで、ケガもしやすい。しかし、同社の社長は「それでも高齢者の熱心な働きぶりを考えたら、病気の欠勤回数などまったく問題にならない」と言っている。

 また、同社は従業員の病欠などで生産体制に支障が出ないように対策も取っている。工場の労働者は皆、病気や休暇などで欠勤した人の補完ができるように、複数の仕事を処理する教育訓練(クロス・トレーニング)を受けているのだ。

 それと、高齢者を雇用するのは同社にとって経済的なメリットもある。彼らの多くは公的な医療保険(高齢者用のメディケア)や年金を受けられる年齢に達しているので、会社としてそれらを提供する必要がないからだ。また、若い人は良いビジネスチャンスがあればすぐに辞めてしまったりするが、高齢者は最後の職場と考えているので忠誠心もあり、定着率が非常に高い。

 大切なのは高齢者が快適に働ける職場環境を提供することである。


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 そうなのだ。実は,高齢者が働く目的は決して,賃金ではなく社会参加であるため,高額な報酬を将来にわたって支払う義務は無い。しかも,社会経験,とりわけ金で買えない人的ネットワーク資産が豊富なため,問題解決スキルも高い。
 国政についてアホだなあ,と酒の肴にする経営者は多いし,やり玉に年金問題があがる。ならば,むしろ自分たちで高齢者を雇用し,米ヴァイタニードル社のように売り上げを3倍にし,それを通じて,若年者にとっても働きやすい会社づくりをめざしてはどうか。
 何かをあげつらうよりも実践なんだろ?と勝手を言ってみる。