村上春樹が語る「希望とは…」


 いま,この時期に「希望」について書いておくのは大事なことだと思うので,メモ。

希望というのはだいたいの場合,待っていたら自然に出てくるものではなく,身体を動かしながら自分で作っていくものです。


p.87 「『これだけは,村上さんに言っておこう』と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?」 村上春樹 絵・安西水丸


長いタイトルの本だが,村上春樹ファンにはおなじみの読者との質問・回答が並ぶ本だ。
 この答えとなった質問とは,20代半ばの女性が,無趣味で人見知りが酷い,今の抜け道の無い生活に滅入り,プライドが高いくせに自身が無く,専門分野がある人に憧れるというもので,なにに希望を持ったらいいのかわからないというもの。
 これに対し,村上春樹は,そう感じるのは誰しも普通のこととしながらも,彼女の問題点として,何もかも一度に解決してしまおうというところにあるのではないか,まずは何か一つだけをキチンと解決しようと決めることを勧めている。その解決すべき一つに意識を集中すると,いろんなほかのことも,そこから自然に「ほどけて」くるかも,と言い,上記の引用につなげている。
 希望をなくしたときとは,モノゴトが絡み合いすぎて,どこからが問題の端緒だったのか見えなくなった状態を言うのだろう。そうであれば,その混沌は,全体としては混沌でありながらも,まずは一つを解決すると決めるべき,なのだろう。そうした解決に向けて体を動かしていきつつ作っていくのが,希望なのだろう。


 この本からの引用は,明日も引き続き。