ミャンマーの国名表記について朝日新聞とフィナンシャル・タイムズの符合


 以下,メモ的に。

おことわり 朝日新聞は,ミャンマーの国名を記事に表記する場合,ミャンマービルマ)としていましたが,今後はミャンマーのみとします。


朝日新聞 2012年(平成24)1月6日朝刊 国際面〈リーダーたちの群像〉真の改革者なのか


さてはて,何か情勢の変化が会ったのだろうか。2012年からは変更するよ,ということなのだろうか。同じ朝日新聞が報じた過去の関連記事としては,

 オバマ米政権がミャンマービルマ)政府の要請に応え、国際会議の場で従来の「ビルマ」に加えて「ミャンマー」との国名表記も容認する方針に転じたことが分かった。ミャンマー軍事政権発足の正統性を認めない立場は維持しつつ、昨年の総選挙を経た現在の政府には一定の敬意を示すことで、直接対話を進め、民主化を促す狙いがあるとみられる。

 「ミャンマー」の英語表記は1989年、前年のクーデターで発足した軍事政権が、「ビルマ」から改めた。日本などはそれにならったが、米国や英国などは軍事政権の正統性を認めない立場から「ビルマ」の表記を続けてきた。

 米国務省当局者は朝日新聞に対し、「米国の利益にとって適切、必要なら、国際会議の場で外交的礼儀を示すために『ミャンマー』との国名を使うこともあり得る」と述べた。ただ、正式には「ビルマ」と呼ぶ政策自体を変更する考えはないとしている。


asahi.com(朝日新聞社):米、「ミャンマー」呼称容認へ 柔軟姿勢で民主化期待 - 国際


と,アメリカが柔軟姿勢を見せ始めていたことの記憶はあったので,あれ,朝日新聞,今ごろ?と思った次第。何かあったろうか。

 バラの花はどんな名称であっても美しく香るだろう。しかし美しく香らないものにはどんな名称がふさわしいか。旧ビルマを長期にわたり虐げてきた軍政が1989年に国名を「ミャンマー」と改称した後も、フィナンシャル・タイムズ紙は「ビルマ」の呼称を20年以上使い続けた。しかし方針変更の時が訪れた。本紙は6日より同国の呼称を公式通り「ミャンマー」に変更する。

 なぜ今なのか、を巡る議論は明快とは言い難い。しかしバランスを考慮すれば変更するいくつかの理由が挙がってくる。

 第1に「ビルマ」という言葉の含意が次第に膨らんできた事情がある。ニュース欄で「ビルマ」の呼称が使用されるたびに本紙が現政権を承認していないことが暗に強調される。政府が改革に向けためらいがちに数歩を踏み出した今でも当社説は同政権に正当性はないと批判する完全な自由を保持する。しかしその他の欄では「ビルマ」という呼称が本紙の客観性を損なっている。

 第2に「ミャンマー」という言葉の国際的認知が進んでいる。国連に加え、同国が2014年に議長国を務める東南アジア諸国連合ASEAN)、さらには人権団体のアムネスティ・インターナショナルまでもが「ミャンマー」を使用している。もちろん米英政府などは依然「ビルマ」だ。しかし長年同国の民主化を訴えてきた活動家の間でも旧名「ビルマ」の呼称は次第に居心地の悪いものになりつつある。

 第3に「ミャンマー」という言葉自体、決してにわか作りの狂気じみたものではない。この言葉と派生形は1000年にわたりイラワディ渓谷周辺の住民の呼称として定着していた。しかし数百年前に口語の「バマ(Bama)」が生まれ発音が単純だという理由から大英帝国が「ビルマ(Burma)」を国名に採用した経緯がある。多くの住民にとり「ビルマ」は旧植民地時代の色合いを残す言葉だ。

 最後に同国の人口の3分の1を占める非ビルマ系住民の多くには「ミャンマー」の方が受け入れやすい。民族的多数派による支配のイメージが少ないからだ。

 ただし呼称変更のタイミングはよりやっかいな問題を伴う。89年以降、早々と変更に走った諸紙の中には旧軍政の残虐さを目の当たりにして変更を後悔したところもある。しかし「ミャンマー」の呼称は特に国内で徐々に標準となりつつあり、「なぜ『ビルマ』と呼び続けるか」が次第に大きな問題となってきた。

 本紙が常に現地の言語事情に従うわけではない。「ニッポン(日本)」とか「ドイッチュラント(ドイツ)」に変更する必要は全く認めないが、「ペルシャ」は「イラン」に、「ペキン(Peking)」は「ベイジン(Beijing)」に、「ボンベイ」は「ムンバイ」に変更してきた。

 しかし「ミャンマー」か「ビルマ」かの論争は政治的色彩を帯びるようになった。いずれの呼称にも当然、一長一短があるがバランスの観点から「ミャンマー」の方が余計な含意が少ないと思われる。中立性の観点から本紙は今後、「ミャンマー」の呼称を採用する。

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(2012年1月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
[FT]ミャンマーへの呼称変更の理由  :日本経済新聞


なんか,言い訳がましいが,苦しくとも説明責任を果たしているうえでは,フィナンシャル・タイムズを褒めたい。後は,大人の事情だ,察してくれと言っている。はあ,そうですか,である。朝日新聞は,言わずもがな,のバッサリなで切りだ。ここは面と向かってではないのでニュアンスは伝わらない。苦しくとも,説明すべきだろう。論壇を張るわけだからね。地方紙じゃないんだからさ。
 それにしても,朝日新聞フィナンシャル・タイムズが同じ1月6日というのは,何なのだろう。申し合わせて手を取り合って?はてさて,偶然ではないのだろう。朝日新聞が右習えした?さあ,どうだろう。ミャンマーに影響する国の意向?そこまで言うと,うがち過ぎだろうね。