あのキョンキョンこと,落語家・柳家喬太郎師でさえ噺家を辞めたいと思うということ


 当代人気ナンバー・ワンの落語家・柳家喬太郎師。キョンキョンと言って喬太郎師を思い浮かべるのは落語通だ。柳家三三師ももちろんイイ。立川談春師の切れ味にはほれぼれする。この技を磨き上げた二人のような実力者とキョンキョンは,どう違うのか,と言えば,キョンキョンは魅せる。魅了しちゃう。これはこの人ならでは。もっとざっくばらんに言うとカワイイと言わせちゃう芸。なので,人気ナンバー・ワン。
 そのキョンキョンが今朝の朝日新聞でインタビューを受けていた。

 いまの学生さんに言いたいのは,夢を忘れちゃいけないってことです。ただし,夢を見てもいいけれど,飯を食うっていうのは,そんなに甘くはないってこともわきまえないと。
 (略)食っていく,看板を掲げるということは才能だけじゃ続きません。覚悟もなしに夢を見るなってことです。それはどんな仕事でも同じ。私はそれをいつも気にかけていました。
 (略)
 偉そうなことを言ってますけど,噺家を辞めたいと思うことはしょっちゅうです。私はストレスの固まり。日々,自分と葛藤ですよ。でも,好きだからやっていけるのです。
 シューカツは大変ですよね。心が折れそうになる時もあると思うけど,くさるなって言いたいです。私自身,くさることはしょっちゅうですけどね。


〈リレーおぴにおん〉覚悟もなしに夢を見るな 落語家 柳家喬太郎さん
朝日新聞デジタル:2012年05月09日朝刊 社説・オピニオン・声面


 本が好きで自分で本屋を持ちたいと思っていた若きキョンキョン。落語にのめりこんだものの就職となるとサラリーマンになると決めていた,という。しかし,好きな噺家になりたくて,入門。そして,11年後に真打ちへ。いまや,もっともチケットのとれない落語家だ。
 そんな喬太郎師でさえ,「噺家を辞めたいと思うことはしょっちゅう」だという。なら「好きだからやっていける」だとすれば,自分の仕事の中に「好き」を見つけよう。結局,「くさることはしょっちゅう」だとしても,だ。