感情労働が必要とされる甘えた時代 ー 「督促OL修行日記」を読んだよ。


 督促業務というハードワークがある。それにしても,何たるハードワーク…,とため息が出る内容だった。クレーマーに理不尽な応対をされたり,上司から闇雲なパワハラモラハラを受けた経験がある方なら,想像できるだろう。そうした暴力の連続なのだから。

 督促や,コールセンターの仕事は「感情労働」と呼ばれているらしい。
 感情労働とは,肉体労働,頭脳労働に続いて最近注目されている労働形態の一つだ。
(略)
 感情労働をする人々は,たとえお客様に一方的に罵詈雑言を浴びせかけられたとしても,反論せず黙ってそれに耐え,相手のプライドを満たし満足させることを求められる。
 感情労働は心の疲労の問題が深刻なのだそうだ。肉体労働や頭脳労働の疲れは休息を取り,体や頭を休めることによって解消されるけれど,感情労働による心の疲労は,一日寝たからといって解消される保証はない。こうして心に疲労を蓄積させた結果,感情労働する人が心を病む確率は他の労働よりも高い。
 それにコールセンターが心を病ませる仕組みになっている点については,いくら挙げてもきりがない。
 勤務時間が不規則だし,24時間稼働しているコールセンターだと夜勤も頻繁にある。コールセンターの勤務体系はシフト制で組まれていて,朝から出社する日もあれば,昼や夜から会社に行く日もある。だから生活リズムなんてバラバラになってしまう。
 こんなふうに心や体を病む要素がいっぱいのコールセンターでは,働いているだけでサバイバルだ。自分で自分を守るしかない。


p.143〜144 「督促OL修行日記」 榎本まみ


 行き過ぎた暴力的な取り立てが法律によって禁止されたしわ寄せが,こうした督促業務に就く人たちへの負担となってのしかかっている。
 では,彼ら,彼女らは督促業務によって,どんな価値を生み出しているのか。

「長期督促」の部署に移ってしまうと,お客様のカードは解約になって使えなくなる。


p.65 「督促OL修行日記」 榎本まみ

支払を拒めば契約者本人の信用情報が悪化する。


p.166 「督促OL修行日記」 榎本まみ


つまり,督促業務は,支払をせずにいる側の連中を守ってあげている。何から?引き続き,信販会社や金融機関からお金を借りて消費できるように,信用をつなぎ止めるために,だ。こうやって,短期的に,信用を毀損しても引き続き,利息を払ってくれている者が大勢いるから,心と体を病む督促業務従事者が必要になる。社会的落伍者を出さないために,督促してくれている,やさしい人たちが必要になる。返さない借り手を「守る」ために。
 でも,オカシイ。延滞をしてしまうような者を,さもさも信用があるように取り繕うことが,だ。甘えている側が存在しているのは,甘やかしている側がいるからだ。むやみに「貸さない親切」が必要だ。会社としては,次々と借金をしてくれる方がいい。だが,そのおかげで,感情労働者を次から次へと浪費してしまっている現状は,社会の重大な損失だ。
 小額をのぞくカードでの信販機能やローン機能の停止,感情ではなく司法手続きによる処理や処分での解決など,改善手法はあるように思う。
 こんなことで,社会や働き手がヘトヘトにならざるを得ないのは,やはりオカシイ。


債権回収OLのトホホな日常 : J-CAST 会社ウォッチ

督促(トクソク)OLの回収4コマブログ


督促OL 修行日記

督促OL 修行日記