日曜の日経で,イノっちが若者論を語っていた。


 イノっち,と言えば,猪子寿之だよね。チームラボの。えっ?違うの?まあ,いいや。猪子氏が若い世代について語るインタビュー記事を見てみよう。

 「生活習慣も違う。20世紀は時間に正確なのが当然だった。今は『夕方くらいに渋谷あたりで』と約束し、着いてから連絡する。待つ間もスマートフォンスマホ)があれば仕事ができる。待たせることは悪いという感覚がない」


若い世代の力を引き出す社会に 猪子寿之氏と常見陽平氏に聞く :日本経済新聞


 常につながり,同じ物理空間にはいないだけで,同じ時間とネット上の空間は共有してるわけだから,そもそも「待つー待たせる」が生じていない。かえって,呼吸音や余計な仕草,匂いなどの余計な情報が無い分,コミュニケーションに専念できる。

 「仕事も同じだ。上の世代は会議を記録するときノートとペンを使う。若者はパソコンに打ち込む。大人の目には失礼に映るが、そのまま大画面で共有でき配布も簡単だ。若者には紙とペンの方が、情報を独占するみたいで失礼に見える。正反対だ」


若い世代の力を引き出す社会に 猪子寿之氏と常見陽平氏に聞く :日本経済新聞


 そう。カッコつけや調子に乗ってノーパソを開いてるわけじゃないんだよね。スピーディに,加工しやすいやり方で合理的に仕事しているわけだ。あるべき方向にアジャストしてるだけなのに白眼視されちゃあ,やってらんねー,と言い出すわな。

 「確かに対面コミュニケーション能力は低い。100ある能力のうち10しか対面での会話に充てていないから下手で当然だ。その分、ツイッターソーシャルネットワークを使える。若い社員にソーシャルメディアでの発信を禁止する企業は損をしている」
「若者がそうなったのは時代に適応したから。肉声より通信によるコミュニケーションが社会全体で圧倒的に増えた。農業の時代を生きるには土壌の知識が必要だ。狩猟時代のままヤリ投げのため肩を鍛えても生き残れない」


若い世代の力を引き出す社会に 猪子寿之氏と常見陽平氏に聞く :日本経済新聞


生き残れない。そうなのだ。キーマンを探し,そのツボを押さえ,感情労働を日々,繰り返し,したり顔で,それが世間さ,と嘯くような「大人」では,オープンで,フラットで,スピード感溢れるこの時代には…。
だから,彼らにとって旧いままの組織では,

 

「(略)ピラミッド型組織に身を置くとパニック状態になる。なぜ『段階』を踏んで報告を『上げ』なければならないのか、分からないから」


若い世代の力を引き出す社会に 猪子寿之氏と常見陽平氏に聞く :日本経済新聞


と,彼らの感覚とのズレが,さらに広がっている,ということだ。

「農業革命、産業革命と並ぶ情報革命が始まり、新しい“民族”が生まれつつある。若い世代はどの国でも上の世代と価値観が離れている」


若い世代の力を引き出す社会に 猪子寿之氏と常見陽平氏に聞く :日本経済新聞


さあ,異民族とどうつきあうか。


 「だからこそ福利厚生よりも、自分たちに合う合理的な組織や場を求めている。しかし実際の組織や上司は分からないことだらけ。目立てば非難されるので、おとなしくしているしかない。もっと寛容な組織をつくるべきだ。日本社会全体に、リスクをとらない方が得という空気がある。これでは起業も難しい」


若い世代の力を引き出す社会に 猪子寿之氏と常見陽平氏に聞く :日本経済新聞


ダイバーシティの問題なのだ。机を並べる同僚は,異民族の異性だったりする。かれらとの面と向かっての接し方を寛容にせよ,ということでない。彼らと共存する社会を寛容にせよ,等しく権利を有する市民社会として組織を機能させよ,ということだ。
 旧い日本人には,また苦手科目が一つ増えた,と言えそうだ。