指原莉乃著「逆転力」を読んだ。これはビジネス書!ただし,新人・若輩者は心せよ。(その2)

 昨日のつづき。
 ここから,より「思考法」や気持ちをどう持っていくか,の話となる。


 人からよく「客観視してるよね」と言われます。
 自分でもそう思います。
 例えば家族としゃべっていても,こういうことを言ったほうがいいんだろうなとか,こう言ったほうが相手も自分も楽しいんだろうなって考えてます。
 コンサートの時も,どこにどう動けば自分がモニターに映れるかってことばかり考えている。
 信じられないくらい計算高いと思います。自分にとってどうすれば得かを,常に考えているんだと思う。
 そんな人間が,人とのコミュニケーションの仕方について考えてみました。自分ひとりの力は,小さいです。発進力にも限界がある。だからこそ,自分の状況を客観視して計算高く立ち回っていかなければならない。そして,周りを巻き込んで大きな力に変えていくのが,?逆転力?の秘訣なんです。


p.106 「逆転力」 指原莉乃


自分が存在しているのは,「我が思っている」からじゃなくて,客体があって始めてそこに,主体である自分がある。ならば,その中に自分をどう置くか,となれば,必然的にコミュニケーションそのものに計算力を働かせて,レバレッジを効かせていくということだろう。


 自分を客観視できるようになると,「人からどう見られているか?」に敏感になります。
 そんな人間にとって,あいさつは超重要です。どんなに疲れていても,できるだけ笑顔でする。できるだけ相手の目を見て,しっかりとする。先手必勝精神も忘れてはいけないところです。
 例えば大きなコンサートがある時は,初めて会うスタッフさんもいっぱいいます。コンサート終わりはいろんな部屋に顔を出して,「ありがとうございました」と言いに行きます。開けてないドアはないか? 全員にあいさつしたか? 脳内で激しくチェックです。
 メンバーの家族と楽屋ですれ違うような時も,気が付いたなら速攻であいさつです。(略)
 好感度って,貯金みたいなものだと思っています。ひそかに「好感度貯金」と呼んでいます。
 疲れていると,イライラしちゃったり,あいさつする気力がなくなったりする。そういう時に「好感度貯金」のことを思い出して,頑張るんです。「ここで貯金を崩さず,貯めよう」って。


p.109〜110 「逆転力」 指原莉乃


あいさつ,できてるー?
ただのあいさつ,じゃない。笑顔+アイコンタクト+先手必勝。

なぜ,「うぃーっす」や「おあぉざいまーす」ではなく,「気持ちのこもったような」あいさつを徹底しようとするのか。有利だからですよ。コミュニケーションがスムースになるから,ですよ。だから,本心とは別に,辛くたって,「好感度貯金」をする,と。


 客観視していると,「今」だけじゃなくて,のちのちのことも考えながら人とコミュニケーションをするようになります。
 私は,自分の意見ははっきり持っているほうです。意見があれば,きっちり伝えます。でも,人の意見を聞く態勢は常にできています。別にぜんぜんそっちの意見で大丈夫だよって気持ちで常にいますね。
 「私はこう思う」と伝えて,「いや,私はこう思う」と言われた瞬間,相手の意見が正しいと思ったらなら,すぐ折れるんですよ。やっぱり私のほうが正しいんじゃないかな……と引けなくなっちょうような時ってあると思うんですけど,そういう時もあっさり引ける。すぐ自分の気持ちをねじ伏せられる。
 のちのちのことまで考えたら,そっちが正解だからです。
 簡単にすっと引いて「そっちに合わせます」となった後で,結果的に私の意見のほうが正しいというのが分かったとします。
 私からは相手に何も言わないです。「ほら〜」って心の中では思ってます。自分が正しかったんだってことは,自分の中だけで思っていればいい。こっちから「ほら〜そうだったんじゃん〜」って言うのは最悪ですよね。
 でも,そういう時ってたいてい,向こうから謝ってくれるんですよ。「さっしーの意見のほうが合ってたよ」。「や,最終的にどっちでもよかったんじゃないですかね〜」。すると,私の株が上がります。
 向こうが謝りやすい環境を作るためにも,引く時は早めに引いたほうがいいんですよ。そこで「じゃあいいけど。そっちに合わせますけど」ってふてくされながら言うと,相手はムカつくだけだから,後日もしこっちが正しかったと分かったとしても「ごめんね」とは言ってくれないんです。
 自分が間違ったことをした時も,すぐ謝ります。
 この間,スタッフさんとケンカしたんです。メンバーの件で私が完全に誤解をしていて,その人を糾弾するみたいな感じになっちゃって。でも,それは私の誤解だというのが分かった時,普通は結構怒っちゃった自分が恥ずかしくて,「それならいいですけど」ってなるじゃないですか。
 一瞬で「ごめんなさい」って言いました。
 一瞬で謝罪モードに気持ちを切り替えられます。「ごめんなさい」の後,「でも……」と言いたい時もあるじゃないですか。それもナシです。謝ったなら謝ったきり。
 そのほうがのちのちに響かないと思うんです。常に今後のこと考えながら,人とコミュニケーションをしているんです。


p.113〜115 「逆転力」 指原莉乃


ここでも,価値を置いているのは,自分の気持ちではない。だから,「すぐ自分の気持ちをねじ伏せられる」,「一瞬で謝罪モードに気持ちを切り替えられます」。彼女の人間性として,人物(!)だったり,大らかさがあったり,「できてる」か,どうかは知らない。彼女自身だって,そうした人間性の豊かさ,高さを増していこうと思ってるわけじゃないだろう。
自分がどう思ったか,より,自分がどう振る舞うか,気持ちより態度だ,ということであり,しょせん,ココロは見えず,カタチが伝わるのだから,伝わるものの方にエネルギーを注ごうとしているわけだ。


 人と面と向かってコミュニケーションをするうえで,シンプルだけど,効果の高い技があります。
 人と話をする時は,目を見てしゃべる。
 そのぶん,疲れますよ。人の目を見てしゃべるのって,体力も精神力も使う。でも,やったほうが絶対得です。
(略)
 人に謝る時も,目をそらさないです。その人が怒っているならなおさら,ずっと目を見る。目を見ながら「すみませんでした」と謝る。
 HKT48に移籍してから,先輩として,後輩を怒らなければいけない立場になりました。
 自分が怒る身になって気づいたことがあります。注意を伝えた時に,本気でへこみすぎちゃって下を向いている子は,ホントはそのほうがすごく純粋なんでしょうけど,私の話を聞いていないんじゃないかって気になるんです。
 真剣にこっちの話をきいてくれている?ふう?の子のほうが,絶対頭は冷めています。こっちの目を見て申し訳なさそうに頷いてるだけで,本心ではだるいなと思っているかもしれない。とはいえ怒っている側としては,そういう子のほうが「私の話を聞いてくれているな」って感じがして,好印象なんです。
 自分はどれほど人に見られているかって考えながらコミュニケーションをとったほうが,得だと思います。〝ふう〟は大事です。


p.117〜120 「逆転力」 指原莉乃


ね。彼女はつとめて,「〝ふう〟は大事」と言っているでしょ。


 炎上にも良い炎上と悪い炎上があります。悪い炎上はたいてい,人にあおられたことでカッとなって,衝動で書いたことをすぐアップしちゃうことで起こります。
 ツイッターぐぐたすGoogle+),ブログに書き込みをする時に大事なのは,流れとタイミングです。書く内容よりも,そっちのほうがぜんぜん大事。瞬発力は禁止。
 思ったことをすぐ言うとケンカにしかならないから,まずは感情を飲み込む。ぐっと我慢して,その後でどうやったら自分に得なのかを考えて書く。あとは,流れとタイミング。
 飲み込むばっかりの人生です。
 でも,たまに戦います。
 ツイッターで,私にヘンなことを言ってくる人は全部見ています。これはさすがにどうなんだろうと感じるツイートがあれば,その人の他のツイートをざっとチェックして,プロフィールも確認します。言っても大丈夫な人だなと思ったら,「こういうことを言われたら私も傷つきます」と返信します。
 私が一番関わりたくないのは,「w」をやけに使って,論点をずらしてくる人。そういう人は,何を言っても変わらないなって思うからです。完全無視です。
 火消しのコツは,ヘンに盛り上げないこと。こちらから蒸し返さなければ,自然と消えていくものなんです。


p.141〜142 「逆転力」 指原莉乃


2ちゃんで,コテハンを持って活躍していた彼女。画面上での空気を読む力が現実に役立っているとも言う。そこから得たのは,「書き込みをする時に大事なのは,流れとタイミング」,「瞬発力は禁止」,「まずは感情を飲み込む」,「どうやったら自分に得なのかを考えて書く」ということ。
そうした空気が重要なのであって,それは「書く内容より」も大事なのだ,と。


 大丈夫と思えば大丈夫なんです。切り替えって大事です。思い込みって大事。
(略)
 信じるパワーが強いってことだと思うんですよ。
 ピンチはピンチだと思うんです。でも,これはチャンスなんだと信じて,思い込む。その思いが強ければ,思った通りになるんです。
 宗教っぽくなってきたぞ……と思われちゃうかもしれないですが,もっとシンプルな話です。
 どんなネガティブな状況も,考え方次第でプラスに変えられる。頭の使い方の話です。
(略)
「速報に入らなかったのは,いいことかもしれないよ。ファンは絶対ランクインさせたいって気持ちになるし,速報に入らず本番でランクインしたほうが,話題になって盛り上がる。だから今はとにかく,絶対入るって信じたほうがいいよね」
 結果的に本番でランクインしなかったとしたら,「今年は入れなくて,来年やっと入れたっていうほうが,ストーリーができて面白いんじゃない?」みたいなことを言ったと思います。
(略)どんなネガティブも,考え方次第で,ポジティブに変換できるんです。


p.155〜156 「逆転力」 指原莉乃


このネガポジ変換。ものすごいことのようで,実は,これまでの彼女の言葉で説明がつくのではないか。自分自身を客観視することで,どうすれば,「痛い人」にならずに振る舞えるか,どう自分を振り付けして,ネタや面白いストーリーとして楽しめるか,と。客観視している指原莉乃がピンチの指原莉乃をどう動かすかを考えると,ポジティブに持っていくほうが面白い!となるわな。


自分がセリフを覚えていないせいで,他の俳優さんやスタッフさんの迷惑になるのがイヤだから,ちゃんとセリフを覚えていこうと思いました。
 人に迷惑をかけたくないから,法律は守ります。
 すぐ近くのコンビニに行くにしても,歩行者用の信号ボタンをちゃんと押して待ちます。どんなに深夜で道が空いてても,車が1台も視界に入ってないとしても,赤信号は絶対渡らない。
 チカチカしている信号を,走って渡るのもイヤです。その姿をみている人がドキドキするし,迷惑だから。
(略)
 一度きりの人生なので,何をやってもいいと思うんです。ただし,人に迷惑をかけないんだったら。


p.164〜165 「逆転力」 指原莉乃


 これは集団の一人として,ルールを守る。法令遵守,ということではない。
 客観視している側として,後ろめたい思いをしながらアタフタしてしまう自分が嫌だったり,そんな粗忽な振る舞いを自分自身にさせてしまうのが嫌だ,ということだろう。

 神や仏にすがったところで,ピンチは解消しない。ピンチそのものも,自分がピンチなのではなく,ピンチな状況に(たまたま)自分がいるということであれば,そんな自分を客観視して,振る舞いを変え,周りの中の自分として,前に出ていく。

 いやはや,とんでもないライフハック本だ。