シーチンピンがオバマと会った日に猪木先生の本を読むことにした


 今日のトップニュース(ローマ法王アメリカ訪問もあるけど)。

【ワシントン=山本秀也】米国を公式訪問中の中国の習近平国家主席共産党総書記)は25日、ホワイトハウスオバマ米大統領と会談した。オバマ氏は会談後の共同記者会見で、米国が懸念を強める中国のサイバー攻撃南シナ海問題など安全保障分野の課題や、経済政策など幅広い問題について話し合ったことを明らかにした。


【米中首脳会談】オバマ氏、企業を狙った中国のサイバー攻撃に懸念伝達 南シナ海問題は平行線(1/2ページ) - 産経ニュース


思い出すのは,そういや,この夏,「経済思想の泰斗」の猪木武徳先生が,このことに触れてたな,と。

 ――2008年のリーマン・ショックを境に先進国経済が停滞し、中国が経済大国としての存在感を高めました。いまや中国がくしゃみをすると、世界経済が風邪をひくような状況です。

 「あのとき中国は4兆元(当時で50兆〜60兆円規模)というケタ外れの景気対策でその実力を強く印象づけ、世界経済の主役に躍り出ました。いまや、中国経済がうまくいかなくなって得をする国は一つもありません。最近も、中国株の暴落や人民元の切り下げは、すぐに世界の金融市場にマイナスのショックを与えています。13億人の経済大国は、不安定さも含め存在感が強くなりすぎました」


 ――世界経済の命運を握っている中国政府は、混乱なく治めていくことができるでしょうか。

 「中国が自分でうまく処理するのかが心配です。いまの中国は1930年代、つまり第2次大戦前夜の日本にとてもよく似ています。第1次大戦後、日本は欧米列強に遅れて準一等国になったが、経済に行き詰まった。そこを何とか打開しようと軍事的膨張が起き、戦争へと突き進んだのです。中国も世界経済に組み込まれ、準一等国になりました。だが国内では格差や環境など多くの問題を抱えている。その摩擦や不満を抑えるため、国家主義に訴えて異様な軍事的膨張を進めています。中国の経済のリスクと軍事のリスクは表裏一体です。中国が戦前の日本のような愚かな歴史をたどる可能性を軽く見ることはできません」


http://digital.asahi.com/articles/DA3S11930189.html


 このインタビューで,猪木先生は「民主主義の弱み」に言及する。(太字は私)

 ――戦後、世界経済は多くの制度が整備され秩序がつくられてきたのに、なぜこのように不安定要素が増えてきたのですか。

 「経済の基盤である自由民主主義が次第に劣化しているからです。民主主義には内在的に財政赤字を生む構造がある。政治家の生きる道は、いかに多くの人を満足させて票を獲得するかにあります。その結果、政治は時に人々の欲望をより膨らませ、資源配分をゆがめてしまう。そして、何でも税金や国家に頼ろうとする風潮が広がります。健全財政で対応できるならいいが、どの国の政府も借金を膨らませて要望にこたえようとする。これではどの国もギリシャと似た運命をたどってしまう」


http://digital.asahi.com/articles/DA3S11930189.html


ここから,代議制民主主義におけるエリートの要件について語るのかと思いきや。

 ――財政赤字を生みやすい民主主義の弱点を克服する手段はないのでしょうか。

 「国家対個人の対立軸だけで考えたら解はありません。二つの間を調和させる何かが必要です。税金への依存が比較的少ない米国や英国では、NPO労働組合や消費者団体のような中間団体がその役目を果たしています。たとえば日本では各省庁が受け持つ各種の統計づくりも、米英では一部NPO組織が担っている。あるいは米国の地方自治の強さも、健全な民主主義をうまく機能させようというメカニズムの一例です」


 ――政府を動かすことだけが民主主義ではないのですね。

 「自分たちの身の回りのことは自分たちで決める。お上(かみ)や国家から言われてやるのではない。民主主義を堕落させないためには、そういう独立自尊の精神が不可欠なのです」

 「ただし大事なのは公共精神という土台も欠かせないことです。私も市場経済は尊重しますが、皆が私的な欲求を満たそうとするばかりではいい社会は生まれません。公と私のバランスが必要です」


http://digital.asahi.com/articles/DA3S11930189.html


 民主主義を語る猪木先生の言葉にもっと触れたくて,以下の本を読むことを決定。


戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)