「小倉昌男 祈りと経営」を小倉の意志の結実とみる


 「小倉昌男 祈りと経営」(森健著)を図書館に予約してずいぶんと経って,ようやく私の順番が来た。読んだ。久しぶりにブログを更新するくらいだから,思うものがあった。

 この本は書評でもずいぶんと話題だった。


[書評]『小倉昌男 祈りと経営』 - 中嶋 廣|WEBRONZA - 朝日新聞社

書評:小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの [著]森健 - 荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

東京新聞:小倉昌男 祈りと経営 森健 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)

小倉昌男 祈りと経営 森健著 福祉活動にたどり着いた背景|エンタメ!|NIKKEI STYLE


中には,ネタバレの書評もあるが,まあご愛嬌だろう。少々のネタバレがあっても印象深さは変わらない。


ただ,私自身,小倉昌男フリークで,彼の著作は,「『なんでだろう』から仕事は始まる!」,「経営はロマンだ!私の履歴書小倉昌男」を持っており,これらを予備知識にあらかじめ人物画の輪郭線はすでにあったため,それを確かめながら本書を読み進めていた。

印象深かったの2点ある。一つは,小倉昌男自身が佐川急便について語っていた点。二つ目は,やはり病気についてである。

一つ目は,東京佐川急便事件をおこすにいたった経年的な違法な営業を繰り広げて来た佐川急便を社内報で糾弾し,あくまで正々堂々,それこそ国に対してだって行政訴訟を繰り広げてまで,「正しい心で経営すること」を追求していた,ということ。

二つ目は,小倉の妻と娘が罹患した病である。社会の進歩によって,症状に対して病名がつくようになり,そして薬が開発される。他界した小倉と妻,そして,互いに語りあうことが稀であった息子と娘。この4者にとって,病を含む小倉家の内幕が開かれることが世の中に役立つんだ,という思いが通底していたのだからこそ,この本が登場したのではないか,と思う。

小倉家の家族4人の年表でもつくってみようか,とも思った。時代と彼らのライフイベントを並べてみようか,と。確かにそれはそれで照らし合わせて,もっともらしい理屈をつけることはできるかもしれない。ただ,それでは,なぜ,こうした本が登場したことにつながらないだろう。会社経営者から福祉財団の運営に転身し,福祉や障害に目を向けさせるような社会への働きかけを生んだ小倉とその家族が,家族を襲う「病」にも社会の目を向けさせること,そのものを結果として望んでいたからだろう,と私は結論づけたい。