読書感想文「吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる」吉本ばなな (著)

 同世代の周りの人たちよりも早く社会的な地位を得たが故に,人とのつながりとは?を考える機会が多くなってしまった吉本ばななが寄せられた悩みに答えるという形式で綴られた一冊。吉本ばななという特殊な環境だから,この回答なのだ!と切った捨てることもできるが果たしてそうか。「妬んだ段階でそもそもが仲がいい友だちじゃないのではないでしょうか」,「この友人の態度を不快に思っている相談者は具体的にどんな対処をしたらいいかと言うと,すぐ,その場で注意するのがいちばんいいです」,「とくかくそういう風に空気を動かさないと,心の中だけで『こいつ嫌だな〜』と思っていると,それだけが相手に伝わってしまう」,「その場で言うのがなぜ大切かというと,お互い深い傷を負わないためです」,「私は無視や裏切り行為をいきなりしてきた人とは,一生つきあいません。会えば普通にふるまいますが,親しくはしないようにします。くりかえしがちなことだし,時間がもったいないです」,「今の私なら,やんわり,しかしはっきりと離れますね。感情で意地悪プレイをする人って,なかなか更生しないんですよ。愛情を与えて包み込んでももちろんダメで,会社や学校に必ず一人くらいいる人種です」,「学校のクラスメイトというのは,そもそも自分が選んだ集団ではありませんよね」,「学校は勉強以外に友だちを作ることを学ぶためだけの場所ではなく,「赤の他人とどうやったら上手くつくあっていけるか」を学ぶところ。友だちができからラッキーだね,気が合う人がいなかったらツイてなかったね,そのくらいでいいと思います」。
 それぞれが異なる存在であることを認め合った世の中で,互いにどう振る舞い,過ごすか。関係が近いと同質化しがちだが,違うことを前提に,必要ならしっかりと関係を断つことを厭わないこと。複雑な社会にあって行動指針となる一冊だ。