読書感想文「ヤマザキマリのリスボン日記 テルマエは一日にして成らず」 ヤマザキ マリ (著)

 私と同年代のヤマザキマリが,テルマエロマエで地位を築く前のmixiやブログの記事(いや愚痴か)を綴った一冊。息子愛をこじらせた姑に手を焼きヘトヘトになる嫁・マリとは,大御所になる前のヤマザキマリその人であり,そんな心が縮れるヤマザキマリの独白である。その後の成功した姿を知っている我々の目線で読んでしまうが,渦中のヤマザキマリはそんな日々のトラブルに散々であって,こんな朝ドラがあってもいいかもナと思う。
 彼女の母親年代が「暮しの手帖」に執心なのは,時代の空気としてとてもよくわかる。手作り,手間を惜しまない生活の礼賛は,確実にあった。アンチ・コマーシャリズム,アンチ・キャピタリズムであるが,物流革命・情報化社会によってもたらされた大量消費社会の到来によって,そうした時間消費はかえって贅沢なスタイルとなった。そうした母のエピソードから,リスボン生活をかいま見ることができるが,大半は疲れた!痛い!動けない!の連発だ。
 だが,姑や夫が嗜好するロハスな食は,後年の彼女の嗜好に確実に影響を与えただろうし,母方の祖父・戸田得志郎の戦前のアメリカ駐在話には感心した。
 私は,ディズニーよりMGM好きというヤマザキマリに意を強くしほくそ笑んだ。だって同年代だからね。


ヤマザキマリのリスボン日記 テルマエは一日にして成らず

ヤマザキマリのリスボン日記 テルマエは一日にして成らず