読書感想文「「さみしさ」の研究」ビートたけし (著)

 結論は出た。最後まで,可能な限り現役でいることだ。老後や隠居,余生はない。年齢に伴う老いや衰えは確実に存在する。そのために,どう生きるか。たけしは言う,自分を客観視できる力を鍛えろ,と。「もし何かひとつに執着していたら,今の自分はなかったと思う。そういうタチだから,今でも仕事を続けられていられるんじゃないかって気がするね」。はー,なるほど。自分の喋りの瞬発力が衰えたと感じたらすぐに漫才を止め,「次に生きる道」を探り,看板のバラエティ番組を始め,役者,映画監督にも取り組んだ。「自分の頭上くらいにもうひとりの自分がいて,俯瞰して眺めているような感覚がある」という。こういう人は強い。なにせ,ポジション取りが上手いのだ。自分で自分を絶えず演出しているのだからね。
 タイトルの「さみしさ」とは,孤独のことだ。たけしは,かつてはよく,森繁久弥立川談志大橋巨泉について語っていた。巨泉には甘えるように懐いていた。たけしにとって,大きな存在がずっと失ったまま,ということ。それが,たけしの「さみしさ」の正体のように思う。