読書感想文「教養として学んでおきたい落語」堀井憲一郎 (著)

 今の落語シーンを語る双璧といえば,堀井憲一郎と広瀬和生で決まりだろう。その我らがホリケンこと,堀井憲一郎がずんずん書いた一冊。そのホリケンが戸惑っている。「落語に行くなら,どういう準備をすればいいでしょうか」と学生に何度も聞かれたからだ。今時のまじめな学生たちだ。ホリケンは語る「たぶん,『伝統的な日本のもの』だとおもっているのだ。そして『勉強していかなきゃ恥を掻きそうだ』と勘違いしているのである」と。
 徒手空拳で落語に向き合えというホリケンの主張とこの本のタイトル「教養として学んでおきたい」とは矛盾する。そうではあるものの落語の今と正対するためには,予備知識があれば,少しは落ち着いて席につき「ニワカ」であっても正しい振る舞いができるというものだ。
 第3次落語ブームと言われて久しい。だが,いつまでも今のトップランナーが君臨するわけではない。次の落語シーンの担い手をこの本を手掛かりに僕ら自身の手で探す旅に出かけよう。