読書感想文「座右の諭吉 才能より決断」齋藤 孝 (著)

 15年前,斎藤孝はイラだっている。前年の2003年,大手金融機関に公的資金が注入される。2004年は,鳥インフルエンザが発生したり,新潟県中越地震に加え,豪雨災害が続いたりとザワザワしていたそんな世相である。政治家の年金未納問題が発覚したり,プロ野球ストライキがあった年でもある。そうそうネット・バブル崩壊後の高失業率の余波が続く世の中だった。
 そんな時代状況において,光文社新書編集部と齋藤は,実務家・福沢諭吉に光を当てた。成功を重ねた福沢諭吉。幸運か?いや幸運を手繰り寄せたのだ,と福沢を評する。理由は何か。カラリとした性格をもとに,理屈やメンツではなく,生き残ること,再起できないような失敗を避けること注力した結果なのだ。
 諭吉は,「マメで気が利くから人に気に入られる。気に入られるからどんどん仕事を任せられるようになる。自分が仕切るようになれば自由が利く」。世の役に立つ学問を学ぶ自分であることが独立自尊で自由となることに加え,こうした生来の性質が諭吉の財産だったと理解できるし,人生のヒントになるだろう。


座右の諭吉 才能より決断 (光文社新書)

座右の諭吉 才能より決断 (光文社新書)