読書感想文「「空気」を読んでも従わない: 生き苦しさからラクになる」鴻上 尚史 (著)

 21世紀版・山本七平著「空気の研究」である。昭和の暗黒粘着物質は,平成・令和を経てどう変わったか?なーんにも変わってない。多様な情報が入ってくるようになったもののインターネット,スマホの「超つながり社会」においては,むしろ世間や空気の息苦しさが強くなった。
 鴻上は,世間の正体,世間のルールを教えてくれるばかりか,世間との戦い方も教えてくれる。慣れないとこうしたテクニックの実践は難しいのだが,「戦う」という選択肢もあることに勇気を持つ子も多いだろう。
 岩波ジュニア文庫ということで,子どもたちが手に取ることを想定している一冊だが,やはり,親や教師以外の大人と接する機会が子どもの考えた方・感じ方を広げるだろう。だから,図書館でも,商店街でも,子どもがでかける場所づくりが必要だろう。
 読後,いま,「社会の分断化」などと言われるが,実は「世間」の紐帯が弱くなっていくことが不安で,攻撃できる他者をつくり上げる「同調圧力」の一形態なのだと,気づくはずだ。壁を築き,その内側で安心したいのだ,と。