読書感想文「最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常」二宮 敦人 (著)

 キャンパス・ルポルタージュである。ルポルタージュとは,センセーショナルであることが望ましく,こんなにも奇人変人変態がいる,常人からは理解不能だ,と騒ぎ立てるのが正しい。本書もそのようにして宣伝されたし,出版された当初,数多の書評もそうした調子だった。
 遅ればせながら,今回初めてページをめくったのだが,アレ,ちゃんとした人じゃん。何かに夢中になっている人じゃん。夢や目標を持って突き進んでいる人じゃん。アレ,アレレ。奇人変人,出てこないじゃん。がむしゃらな人じゃん。熱い人じゃん。燃えてる人じゃん。
 ものづくりやアート,デザイン,ファッションの世界で生きる人たちってこんなものじゃないかな。後先考えず,目の前にものに全力で傾注する人たちなわけで。
 確かに大学を出た後,アートを生業として「食っていける人」になれるのはごくごく限られた人であろう。ただ,そうしたアートを突き詰めようと七転八倒した経験者を私が人事担当者なら,リクルーティングするけどね。異能異才が次の時代を作るんでしょ?
 次に,著者には,料理,理美容,福祉の専門学校を訪ねてもらいたいもんです。


最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常 (新潮文庫)

最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常 (新潮文庫)

  • 作者:二宮 敦人
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: 文庫