キーン先生の生涯最後の新聞連載である。95歳。日記といってもさすがに,最近の出来事よりも,昔の話しや本人の思いの方が多くなる。そして,繰り返し,同じ話も出てくる。この本を読む醍醐味は,繰り返される話を「老人だから」と,いやはや,こりゃどうも,とため息をつくのではなく,どうしても繰り返さざるを得ない,その動機の深淵を探るきっかけとすることだ。
日本文学をただただ愛し,古典の魅力を純粋に語る。そればかりか,同時代の日本人作家と熱心に交流し,彼らを世界デビューさせた,その功績は,ただただ大きい。そのキーン先生が,いくつも苦言を呈してらっしゃる。日本の入試制度,震災後の日本とりわけ復興予算の使途,原発再稼働,特定秘密保護法,新国立競技場,ヘイトスピーチ,憲法…。熱い,熱すぎるほどだ。先生の晩年の日本社会を表す同時代史料にもなるだろう。
キーン先生が日本を「超一流の二流芸術国」と評している。これはもっと誇っていいし,お遊戯会に始まり,季節行事,季節食を通じて,教養の底堅い日本社会を愛していらっしゃったのだ。

- 作者:ドナルド・キーン
- 発売日: 2019/09/26
- メディア: 単行本