御存知・辞書編纂者の飯間先生の最新刊である。新聞連載をもとにしているので,小気味よくページが進む。サラサラっと。だが,取り上げられる言葉の一つ一つは,さすが,飯間先生がコレクションした「引っかかる言葉」であった。日本語の現在をシャッターで切り取った,現時点での「変な日本語」である。
この本で取り上げられる言葉の数々に,とくに疑問や違和感を持たないものも多い。「お昼のランチ」も,まあ,昼間,寝てる人にとってのランチは夜だしな,と思う。「立駐」もキーボードで変換すりゃあ,出てくる日常語だろう。「ほぼほぼ」なんて,親しみも伝わるスタンダードだ。
だからこそ,ときどき,飯間先生が言葉の変化を一瞬,堰き止めて,流されがちな僕らの言葉の今をチェックしてくれることは,とても意味がある。
浚渫工事は「しゅんせつ工事」ではなく,「水底土砂の除去工事」とする方がちゃんと伝わる,という飯間先生の主張は正しい。ひらがなにすりゃやさしくなったと思うのは,見当違いも甚だしい。やっつけ仕事だ。文系の力は大事である。
- 作者:飯間 浩明
- 発売日: 2019/11/13
- メディア: 新書