読書感想文「自治体議会の取扱説明書」金井 利之(著)

 野望や夢を語るのではなく,徹底したリアリストの東大大学院教授・金井先生による自治体議会論である。序章「議会の意義」において,事例とされるのが阿久根市竹原市長,大阪維新の会を主導した大阪府橋下知事らの首長暴走である。すでに起きてしまった暴走に対し,「議会があってもなくても,あまり変わらないと言えるかもしれない。しかし,議会がなければ,首長はもっと暴走できる」という。
 このイントロから,「議員は,住民と接触すればするほど,見返りが多くなるような仕組でなければならない。議員報酬は,住民の意向を聴取・反映した時間や,情報収集や政策調査などに従って,バウチャーで支払われる方がよい」,「口利きは,ウラでゴソゴソやるから意味があると議員も考えているのかも知れないが,それは従来の発想に呪縛されているからである。住民の個別事情を行政にくみ上げることが,不当・違法であるはずがない」,「議会において野次は重要である」,「議員に求められているのは《正しい野次の仕方》の研鑽である」と続く。
 専門誌連載をベースにしているため,金井先生のスパイシーな主張が一般読者に伝わりにくいかもしれないが,旧来の教科書やマニュアル・図説にはない手触りがある。現実への解を出した金井先生に僕らが答える番である。