読書感想文「観察する指揮官 「辻流」選手との接し方」辻 発彦 (著)

 「監督本」である。有名人本であり,私が西武ライオンズファンだからと言って,「我らが辻監督,きっと面白いゾ」と確信を持って入手したわけでは無い。まして,現役監督である,監督生活全てを振り返ったわけでもなく,2年目に優勝した時点で出版された本だ。当然,内容に不安はあった。
 しかし,これが面白い。社会人野球時代を含め,現役選手時代から,選手目線で監督から受けた指導を振り返り,広岡,森,そして野村監督,コーチ時代になってからの落合監督,これら名将のもと,受けた指導,かけてもらった言葉を,今日の監督・辻の糧になっていることを丁寧に書き連ねている。そして,それを現代の若い選手達に単純に当てはめるのではなく,いまの時代にあわせ,指導方法,かける言葉を換えている。
 昨シーズンの2019年も優勝し,リーグ連覇を果たしたもののクライマックスシリーズを逃して日本シリーズには進めていない。毎年,有力選手がメジャーや他球団に流出する。そんな中,人を育て,我慢しながら選手を起用する,そんな辻監督の戦い方を確認するためにも,他チームのファンにもお勧めする1冊だ。
 2点,追記しておきたい。1つ目は,選手の名前は,全員,毎回,フルネーム表記である。この意図は聞いてみたい。2つ目は,監督とは部長,ヘッドコーチは次長,専任コーチや2軍監督は課長,キャプテンは係長なのか,と考えたりもする。大組織で働く皆さん,いかがだろうか。


観察する指揮官 「辻流」選手との接し方

観察する指揮官 「辻流」選手との接し方

  • 作者:辻 発彦
  • 発売日: 2019/05/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)