読書感想文「こども六法」山崎 聡一郎 (著)

 「子どものために」と願う大人のための本だ。子どもが守られるとは,実社会においては物理的なものだし,金銭的なものだ。そうした子供が危害を加えられる環境から逃れられるための法的根拠を示したのが,この本だ。子どもを守る理屈であり,守られるための便法だ。
 ただ,歯痒さや遣り場の無さをどうしても抱えてしまうのは,こうした法律そのものを知っているだけでは役に立たないという点だ。勇気や逃げる脚力,隠れる場所,支援を求める発声など必要なものは多い。それにも増して必要なのは,世間一般に,こども六法の知識が浸透していなくてはならない,ということだ。中学や高校で,対人ロールプレイなどとともに法によって最終的には守られる自分たちや他人の存在を学ぶべきなのだろう。
 著者のいじめ被害経験と,その後の加害経験がこれを書かせた。法律とは白黒つけるための道具と考えれば,分かり合えなさや不平不満の存在を前提に,折り合いをどうつけるか,という法律以前の話と向き合うことになるだろう。


こども六法

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