読書感想文「ねこバカ いぬバカ」養老 孟司 (著), 近藤 誠 (著)

 手に負えなさ,とどう向き合うか。いや,手に負えなさを,どう自分の生活に導入するか,を問いかけた本である。それは,ペットであり,子どもであり,老いであり,病いであり,自然である。
 言葉や理屈でどうにかなるのは,大人だ。だが,かつては,大人が大人でいる時間は,そんなに長くはなかった。元服が15才だとすれば,人生50年だとのこり35年。3分の2だ。それが,入学前から聞き分けのいい,物事を理屈で考える「小さい大人」が出現する現在,7才以降を大人だとすると,平均寿命まで生きりゃ,75年以上の10倍もの大人時間である。世の中から子どもの突拍子もなさ,予測不可能さが見えなくなっている。
 身の回りに,ペットがいることで自分が振り回される理不尽さを導入することで,自分自身の自然を取り戻そうとしているのではないか。
 犬も猫も,人も栄養がよくなり,長生きするようになった。別れ方も熟れなくなっている。無常さとは,自然災害や感染症だけが教えてくれるわけではないのだ。


ねこバカ いぬバカ

ねこバカ いぬバカ