読書感想文「にわか〈京都人〉宣言 東京者の京都暮らし」校條剛 (著)

 縁あって京都で仕事をすることになった方の報告である。定年退職して,現役時代の知識や経験をもとに,京都に職を得たのだ。羨ましがられる立場であろうし,5年間の異邦人体験であった。
 家族とともに移り住んだわけではなく,本拠を東京に残したままの単身赴任である。すると,そこで滞在するノウハウやスキルが溜まってくる。ホテル暮らしの延長のようなものだ。あくまで外部観察者としての目で京都を見た結果の積み重ねが記録されることになる。
 覚悟を持って,土地に暮らすわけではなく,戻ることを前提に暮らした日々。長期の旅人である。なので,広く上っ面の京都である。京都はこう見えているーそう,この本の需要とは,実は京都人であり,京都をプロデュースしようとする人たちである。
 外部から京都に思いを寄せる者など,ディープ京都を知りたい方々には,生粋の京都人・入江 敦彦さんの「京都人の秘そかな愉しみ」など一連の著作をお勧めしておく。