読書感想文「どもる体」伊藤 亜紗 (著)

 ザワザワするのだ。実際に,本人も周りも吃音であるーという認識なく暮らしているとしても,「私」が私のコントロールから外れていく様,もしくは,私から見て「私」がブレてしまう感じは,体への違和感や観察する自分の「意思」や,「感情」としての自分というものをこの本は意識させてしまうからだ。
 想いが溢れて,口や喉を想いが追い越してしまう,あの感じ。こんなことがあったんだ!と伝えたいが説明の順序もグチャグチャになるので,チラシの裏面に謎の図形を描いて伝えようとしていた幼少期。歯磨きの際に,ゆすごうと口から洗面台にどう排水するかを意識した途端,それまでどうやって無意識にやっていたのかわからなくなり,口をすぼめてピューっとふざけて飛ばすようにしか吐き出せなくなったりしたときのことを思い出す。
 どもるとは,を考えることは,言葉を口にする自分が,発意ー言語化ー音声化をそれぞれの段階において,それらをコントロールするそれぞれの自分が互いにノーエラーでのやり取りを考えることだ。読み進めるうちに言葉を話す自分というものに,不安になる。多くの読者とこのザワザワを共有したい。



どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)