読書感想文「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」デヴィッド グレーバー (著)

 「王様は裸である」と種明かししてしまった本である。
 なぜ,やりがいを感じられもしない仕事で,真っ当な額の収入を得てしまっているのか。いい大人はそんなことを口にしないものだ。しかし,働いたことで価値を生み出し,そのことで生業として収入を得る。そんな価値を自分の職業としての働きに見いだせない人があまりにも多いんじゃありませんかね?とデヴィッド・グレーバーは言うのだ。調べましたよ。ずいぶんとたくさんの人が,そうですよね?と。
 いま,我々の社会において必要とされることの一つが眼前の問題に対する「スピード感を持った取り組み」である。実際に,仕事を加速させたり,当初の日程を繰り上げたりすることじゃない。いかにも,忙しく「やってる風に」見せることだ。いやー,大変そうですよね?と。物分かりのいい人に,そう言わせりゃ勝ちだ。いや,価値か。実際の測定可能な仕事量ではないのだ。いかにも「やってる」と思われればよく,きつい仕事(シット・ジョブ)が蔑まされたままに。
 そんな「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」が蔓延する社会に僕らは生きているんだ,とバラしちゃった本だ。