読書感想文「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」吉田尚記 (著)

 小学校高学年の教科書に採用すべきでは無いだろうか。もちろん,中高生や大学生にとっても。
 天然でコミュニケーションに長けた方はいる。だが,人との交わりや社会や世間の大勢の中で泳ぎ,息をする,まさに生きることの難しさの理由を,たまたま,その人が生来,持ち得た性格や能力に還元してしまうことが本当にいいことなのか。むき出しの「自分」で生きられないとわかっていても,閉じ籠もったり,偽ったり,我慢したりして,デイタイムに「自分」を押し殺しさえすれば,一人時間に自分を全力で放つことができるーそんなハイ・コンテクストな面倒な世の中で生きる術としてのコミュニケーションを,教えてもらえなくていいのだろうか?
 吉田は「コミュ障のメンドくさいオタク」ながらも放送局アナウンサー,ラジオパーソナリティとして活躍している。そうした「ツッコマレどころのある自分」ゆえに,ズゥーッと考えてきたコミュニケーションの正体とそのスキルを,この本で並べて見せた。ラジオパーソナリティというコミュニケーションを売る商売の最前線の現場にいるからこそ信頼度も高い。
 実践を要するもののコミュニケーションは性格でも人柄でも無い,ただのスキルだ。だとするならば,教育で身に付けさせるべきものだろう。この本は,多くの人を救うことになると思うが。