読書感想文「禍いの科学」ポール・A・オフィット (著)

 「まぁ,落ち着け」である。
 バラ色の未来を約束する素敵な魔法もたまにはある。だが,おっちょこちょいの僕らは,つい乗って,乗せられて,「発明」や「アイディア」や「ニュース」に飛びつく。そして,往々にして取り返しのつかない顛末を迎えるのだ。
 科学はどこまで行っても純粋に科学だ。しかし,その科学的知見を受け取るのは,ただの人間社会だ。理性的でも合理的でも無いのだ。強欲だし,思い込みが激しく,猜疑心にまみれた愚かしいオレ達なのだ。アヘン,トランス脂肪酸,窒素固定法,そして優生学ロボトミー手術。紹介される各章には,うんざりだ。発明や着想は素晴らしくとも,それを受け取る側がことごとくパーだと,ろくなことにならない。チェックすべき対象は,「発明」や「アイディア」なのだろうか。違うだろう,浅はかでお調子者の僕らの方だ。
 いま,この瞬間にも過ちを犯していないか。本当に社会を進歩させることに,その知見は生かされているか?「過去の振り見て,我が振り直せ」である。