読書感想文「平成の終焉: 退位と天皇・皇后」 原 武史 (著)

 平成の天皇,皇后はどう行動したか。
 2019年3月20日発行,つまり平成が終わる4月30日のひと月前に,立ち止まって考えるため企図された本だ。
 平成の天皇,皇后とは,あちこちに出向き,市井の声を聞くために人の輪に入り,膝を折り,問いかけた。その姿とは何だったのか。「象徴」とは何かを求めた姿ではなかったか。聖性をまとい祈る。そうすることで追い求めたのだ。昭和と違い,戦時下とはならなかったものの,平成という時代も,震災,火山噴火,テロ,経済危機など人々の生活を揺るがす事態が続いた動乱の時代である。決して穏やかとは言い切れぬ時代だった。
 第一線を退き,一つの時代の区切りとなる「改元」を迎えたとは言え,まだまだ気分が一新されたとはいかない。まして疫病が流行し,人前に現れるのもままならないのだから,困難な新時代のスタートとなった。やがて,令和を振り返るときが来る。そのときにきっと参照元となる一冊だ。



平成の終焉: 退位と天皇・皇后 (岩波新書)

平成の終焉: 退位と天皇・皇后 (岩波新書)

  • 作者:武史, 原
  • 発売日: 2019/03/21
  • メディア: 新書