読書感想文「ゲノム編集とはなにか」山本 卓 (著)

 生命科学,医療,創薬,農業,いやいや,そんなもんじゃないぞ,ゲノム編集のインパクトは。そして,2020年のノーベル賞「クリスパー・キャス9」が,本命である。
 何がスゴいのか。ゲノム編集にはクリスパー・キャス9が欠かせないツールになっているということだ。どうしてか。狙ったゲノムの場所を簡単に改変できるからだ。クリスパー以前に,第1世代・ZFN,第2世代・TALENといったゲノム編集技術があったが,編集部位を特定するのは大変だった。それが,ガイドRNAを作成しキャス9酵素で切断することで,スピードと精度が格段に向上したのだ。
 特定の遺伝子疾患などを標的に編集できる。それも手早く,容易に。つまり,ゲノム編集をやることが生命科学や医療,創薬において当たり前の時代に入ったということだ。もはや,家庭用の照明に白熱電球を選ぶ者がいなくなりLEDが標準となったことと同じことが,起きているのだ。それは,遠い研究室の話ではない。ゲノム編集が確実に我々の生活を変えるのだ。