読書感想文「ネオウイルス学」河岡義裕 (編集)

 若い学問分野の勃興期である。
 病原体としてのウイルスを研究対象とし,生物に病気をもたらすことを解明したい,病気を防ぎ治療したい,との動機だったのが従来のウイルス学だった。それが研究が進んだ今,必ずしも病気をもたらさないどころか,ウイルスが生命の進化をカギとなる事例もわかってきて,学問分野としての幅がぐんと広がり,立ち上がったのがネオウイルス学のプロジェクトだ。
 若い研究者たちが自身の研究活動を答えるだけでなく,なぜ,この学問分野に進んだのかを話す。偶然の出会いや何気なしに決めたことだったりしている。これからはどうか,現在のコロナ禍を経て,中高生がネオウイルス学に進むだろう。熱く優秀な子たちがまなじりを上げて扉を開けてくることだろう。そして,常識が覆ったり社会生活が大きく変革してしまうような新発見,新開発にもなるだろう。
 生命科学遺伝子工学などと呼ばれているものも含め,中高生の教科書も改められることになるし,高専や工業高校,農業高校などの改組や学科再編も起きるのではないか。研究の最前線を知ることで明るさを感じることだろう。