読書感想文「小説 黒田如水」童門 冬二 (著)

 後悔をする男・黒田如水である。
 何せ「天下一鋭い頭脳の持ち主」である。ほぼほぼバカにしてるのか?と聞き返す称号だ。だが,本人にもその自覚がある。ヤレヤレ。
 如水は小早川隆景にこう言われる。「如水殿は頭がよすぎる。そのため,決断が早い。それに引きかえ,私は考えに考え抜いた後,やっと一つのことを決める。そのため,私自身は自分の決めたことに後悔するということがない。ところがあなたは,あまりにも決断が早いために,しばしば後悔されている。やはり,決断には沈思が必要でござろう」。
 勘働きがいい者とは,答えや解決方法が見えてしまう。それを言われた方は,そうなのだろうとは思う。ただストンとは落ちない。だから,勘働きがいい者は焦れったくなって余計なことを言い,いらぬことをしてしまうのだ。言わなくてもいいことを言っちゃったことで後悔するのだ。でも、頭の中に次から次へと言葉が浮かんでしまう。口に出して気持ちよくなりたいし,スッキリしたいのだ。
 度量や器量が、第一人者の必須項目だといま一度教えてくれる一冊である。