読書感想文「料理と利他」土井善晴 (著), 中島岳志 (著)

 食材を食事に加工するプロセスである料理とは何か。
 清潔,安全であり,味であり、見た目であり、量であり、栄養であり、食べやすさである。本来、腹が空いて食うものである。なので、カロリーメイトと牛乳と果物があれば生きていける。お腹を壊すこともない。
 だが,三度三度の食事をちゃんと摂ることを意識しだすと大変だ。ちゃんととは何か?の壁にぶつかるからだ。途端にみんなが悩みだす。美味しくなくちゃ、キレイじゃなきゃ、いろいろなきゃ、…etc。そして料理が苦しくなる。
 そんな皆んなに土井は「ええ加減でええんです」と言ってくれるのだ。泣いてすがりつきたくもなるだろう。「ちゃんとする」ことの物差しを自分に当てはめ、「できていない」と自分へ評価を下す。
 カロリーメイトと牛乳と果物でも、手を洗い、気の利いた皿に盛り、趣きのある器に注ぐことでちゃんとした感は出る。料理なんて加工である。加工プロセスや調達という作る作業が負担で辛いならば、食べる作業に入るときに生活の折り目をつける。そういう「ちゃんとする」ハウツーを導入し、「作る」自分から「食べる」自分たちへ気を使ってるふりをするだけでもいいじゃない。それも利他じゃない。そんな対話である。