読書感想文「ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治」藤井 誠一郎 (著)

 まちづくりには,2つの側面がある。一つ目は,文字通り,「まち」に見たことのない新しい何かを「つくる」こと。もう一つは,その「まち」における生命・健康・財産を守るために仕組みや制度,仕事の新しいやり方を「つくる」ことだ。この本のまちづくりとは,後者。ごみの無い衛生的で快適な環境を守るまちづくりだ。
 ごみは嫌われる。そりゃ捨てるためのものだから,わずらわしく,できることなら早くその存在を忘れたい。出してしまう前に手間や面倒を掛けたくないのだ。一般の人は,そう。だが,ごみを集め,適切な処分のルートに乗せるために汗する人たちにとって,正しく,限られた時間に集めきるために,ごみのことを真剣に考えつくし,体を動かす。
 ごみの現場への参与観察である。人間生活が行われるとき,そこには必ず,ごみの発生が伴う。人間は生まれてから死ぬまで,ゴミを生産し続けるのだ。ごみの世界という,まだまだ調査研究が行き届いていないワンダーランドは,あなたも無関係では無い。そして,死んでもなお,財産や思い出ともにゴミも残していくのだから,必読である。