読書感想文「古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々」虎尾 達哉 (著)

 緩い律令国家である。権威っぽい体裁を整えようとするのだが,朝廷を成り立たせようとしようとする側と,メンバーとして名を連ねている官人たちにシビアさが無い。「嫌だし面倒だし,あー,もう行くけどさ,顔は出すけど遅れるよ」だし,「いや,まー,とりあえずさ,カッコつかないからさ,来るだけきてよ,難しかったら遅れてもいいし,ちょっと覗くだけでいいし。いや,もー,何だったら誰かの代返でもいいから,来てたことにしてよ」。
 何だこれ。お店のオープニングイベントかよ。話題の注目のショップ!と言われたいのと同様に,権威を擬態してまで成り立ってる風に見せたい。大陸の統一国家は,ちゃんとしてる。わーすげー,と思った。こっちもちゃんとしてるもんね,と見せることが大事になった。ハナっからイミテーションなのだ。
 任官・罷免が取り替え可能ではなく固定メンバーで回さざるを得ず,メンバーのモチベーションを上げるような動機付けや承認も難しい。そうなると,とりあえず皆んなが参加してることが目的になりズルズルとダラダラと,いつも同じメンツの寄合になる。
 所詮,こんなもんであると言えるかも知れないし,緩さを包含した社会の良さを見出してもいいかも知れない。だが,一つの警句として受け止めておくことが正しいだろう。