読書感想文「ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」」平井 一夫 (著)

 今どきのマネジメントの教科書である。また,かつて栄華に浸った日本のエレキ産業の衰退当初における「ニッポンの会社の視点」から見れば「異端のリーダーシップ」である。
 大きな会社が,大きな会社として採用した人たち,すなわち「大きな会社だから就職した」人によって運営されるようになってしまい,なぞの大きな会社として論理が幅を利かせるようになると「大きい」以前に「会社」として判断がそもそもどうなのよ,となる。平井は当たり前のコミュニケーションによる当たり前のチームビルディングによって,当たり前のマネジメントをやろうとし,やってきた。だが,大きな会社としてソニーにとっては,ガイジンを社長にし,帰国子女である平井が次の社長に据えることでしか,カリスマ経営者時代から抜けることができなかった。いや,抜け出ることができたソニーは,それでも幸せだ。この間,我が国はどれほどのエレキ産業を力を失い,技術が遅れ,会社や職場が無くなっていったか。
 日本中の蛙は茹で上がった。水温が上がったことに気づいた蛙のチャレンジだけが次の時代をつくるのだ。