読書感想文「室町は今日もハードボイルド: 日本中世のアナーキーな世界」清水 克行 (著, 編集)

 みなさんお馴染み,世界最凶の日本中世がテーマの野蛮ワールド解説本である。
 紹介される中世が,ちょっとヤバいのだ。アナーキックで瞬間沸騰型にキレて殺しまくり,暴虐非道の即殺人社会。まぁ,そうなんだけど,現代にチラチラ地続きなのだ。多様な言い分,主張があり,あちらもこちらも立てる必要があり,スジを通さないと通用しない。
 通貨や農業技術がジワリジワリと発達してきてモノゴトの扱う単位や行動や視野に入る範囲が広がることで世間や社会を意識することが可能になってきたことで,中央の権威や宗教だけがイバるのではなく,自分たちも何か言っていい。複数方向の社会のベクトルが作用する時代になった。
 ヤクザ集団としての武士がただただハバを利かすヤバヤバ社会だから混沌としていたのではなく,あっちもこっちもいろんなパワーが興って社会が混沌としたからこそ,暴力装置としての武力が尊ばれたのだ。ヤレヤレ。
 多様性の時代であり,様々な価値が共存する現代である。中世をバカにせず読んでおくことは価値があると思うぞ。