読書感想文「行政学講義」金井 利之 (著)

 行政とは,見えにくい存在だと金井先生は言う。網羅する対象の範囲の広さとそれに応じた組織・機構,国と地方,政治と官僚や現場職員の関係など,複雑多岐に渡るし,興味関心なく関わりを持たないように生きようとすれば,最小限の接触にすることだって可能だ。
 そうした行政の存在を金井先生の手によってレントゲン撮影して見えるようにしたのがこの本だ。つい天下国家の国家統治の観点や国際社会の現状から行政機構を語ってしまいがちなのだが,この本は違う。地面に足がついたまま「何か難しそうなことを言ったって,アレの仕組みはこうなってるのよ」と教えてくれているのだ。有難いじゃないか。言わば,種明かしだ。
 とは言うものの行政という大きなものを,どう相手にしていくのかは難しい。難しいことを前提に,付き合うことを避けず,必要かつ適切な要求をしていくことを続け,過大な期待をせず,安易に諦観もしない態度だよ,という金井先生の言葉は金言だと思う。