読書感想文「スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力」竹内 一正 (著)

 今ごろ,ジョブズかよ。そうなのだ。もはや,みんな知ってる教科書に載る偉人だ。エジソンやフォード一世と同格か,それ以上の存在だろう。今さらだ。
 エピソードや伝記の類であれば,食傷気味だ。だが,この本の価値はそこじゃない。欠点だらけの人物だったからこそ犯した失敗の数々が,僕らの役に立つことを語っているのだ。そして,その失敗の多くは僕らが既に知っていることだから説得力もある。
 若きジョブズアップルコンピュータ社として「成功に酔いしれた」。だが,成功とは,不安定な頂(いただき)に過ぎないのに,慢心した。たかだか,一瞬の成功に浸ってはいけないのだ。次の瞬間から,次の目標に向かって挑戦しなければ、アッという間に過去の人になる。
 必要であれば,ある面においては時流を待ち,風が吹けば一気に攻め,目の前のチャンスを逃さぬよう果報は寝て待ってはいけないのだ。
 成功とは瞬間のものだとすれば,その存在は常に過去である。ならば,常に現在に続く失敗こそ我らを勝利に導くものだ。ジョブズと一緒に噛み締めてみてはいかがだろう。