読書感想文「東芝解体 電機メーカーが消える日」大西康之 (著)

 Lo-D,Technics,OTTO,Aurex,日本marantz,DIATONE,山水,nakamichi,DENON,OPTONICA,AKAI,……。呪文ではない。かつて日本の電気メーカー各社が競って世に送り出したオーディオ・ブランドだ。大手電気メーカー系もあれば,独立系もある。かつて家電量販店にはオーディオフロア(フロアだよ,コーナーじゃないんだ)があった(好事家のために,JVC,pioneer,KENWOODYAMAHA,audiotechnicaもあったし,NECがアンプを作ってたことも触れておこう)。
 栄枯盛衰では,ある。だが,本質はそこだろうか。主役は,2008年のリーマンショックの越し方ではないか。本書が取り上げるのは,NTT一家の電電ファミリーのNEC富士通東芝,日立,と東電以下電力10社に馳せ参じる電力ファミリーである三菱重工東芝,日立。そして,シャープ,ソニーパナソニック三菱電機富士通だ。ファミリー企業は「本業」に縮小した。余技を保つ余裕がなくなったのだ。それまでの円高による海外投資の失敗もあったが,社内のリソースをどこに振ると良いかわからなくなってリストラ(構造改革じゃない。ただの撤退と事業売却だ)にリストラを重ね,切り売りし弱小化した。
 日本が海外にモノを売り,サービスやソフトで席巻するのではなく,ただアジアの金持ちの遊び場,草刈り場になって久しい。リーマンショックを紙幣を擦りまくって乗り越えた中国。負債を償却し勝てる事業に掛けた韓国。伝統芸のトゥー・レイト・トゥー・スモールの日本。結果はご覧の通りだ。
 DRAM,液晶,フラッシュメモリー,LED,iPhone,…,トピックとなるものはいくつもある。だが,経済を支えるのは金融だ。金を渋れば萎む。唯一,リーマンショックの対処を間違え衰退する国として記録されるか。はたまた,コロナ危機からかつての反省を踏まえ復活できるか,裏テーマは緊縮財政である。