読書感想文「財布は踊る」原田 ひ香 (著)

 隣近所のダークネスである。
 では,財布とは何か。本来はお金を入れる袋だ。だから,ATMの横の壁に挿さっている金融機関の封筒だっていいはずで,借金を返すときにその金融機関の封筒が意味ありげに使われたりするように,財布の意味とはお金が入っている(であろう)袋だ。だから,財布はお金が入れてある前提で,お金の象徴になる。
 最低限の金で生きるには,知恵と才覚がいる。無知と無関心ではいられないのだ。食事の摂り方だって,献立だって,日用品の買い物だって,世の中を知らなければ,お金についての危険を避けようとしなければ,自分の身に不運と不幸がやってきてしまう。気づいたときには健康を害し,貧窮から抜け出せなくなってしまうことだってある。
 お金にとらわれぬよう,お金に人生を掠め取られぬよう自分自身を鼓舞することだ。欲に塗れてしまうのは人間の業(ごう)だし,お金は大事だけども,お金とは一定の距離を持つことも大事なのだ。そして,問われるのは,お金が入っていない財布の持つ空虚さが意味するのは何なのかということだ。
 そのためにこの本を読んだ後,「ナニワ金融道」,「闇金ウシジマくん」,「クロサギ」を読み直していいはずだ。