読書感想文「ぼくらの戦争なんだぜ」高橋源一郎 (著)

 戦争(がある世の中)の文学である。
 毎年,ひとは生まれる。なので,平和な年も戦争の年も子どもは生まれる。平和な年も戦争の年も全ての学年生まれの子どもがいる。なので,後に戦争を語るのは,当時,「多感な少年少女時代を過ごした者」ばかりではない。多感な少年少女時代が過ぎた人だったり,まだ,背伸びしてもその年代ではなかった人たちもいる。だから,戦争を語る視点とは,一様であるはずがない。悲しかったり辛かったりする者だけでなく,嬉しかったり憧れたりする者もいたのだ。
 戦争とは,無分別なイキったバカに帰結してしまうものだ。その渦中にいると思うと,つい大きなことを語ってしまう。太字の大文字の言葉で主義を主張するし,威勢のいいデカいことを言うことだ。ただ,もっと前から,小競り合いや身近な暴力はあったのだ。欺瞞やデマカセや不正があったのだ。それを放ったらかしにして,さもさも,ある日,大戦争が起きましたよ,と言う。ホイッスルが鳴って整然と始まるかよ。社会は連続しているし,当たり前に語る主体の立場もそれぞれなのだ。
 だからこそ,冷静に平熱でいることだ。焦らず慌てず,よおく見ることだ。小さなできることをやることだ。無理や無茶をしたり,おかしなことに巻き込まれないようにすることだ。捨て鉢にならず,日々の暮らし大切にすることだ。
 それはどんな状況になろうとも。