読書感想文「新プロゼミ行政法 「3つの手続」で行政法の基本を学ぶ」石川 敏行 (著)

 ジョークのわかる人間は大切だ。もちろん,ジョークを思いつく人間がいてこそであり,この本は石川節のジョークが冴えわたる。
 この本の性格は,「ザ・行政法読本」なのだが,著者のカラーや思い(気分,感情)が多分にこもっている。そう,石川先生の全身性が紙面に表現されている。いわば紙面ライブなのだ。頭で考えたことを並べただけの教科書じゃない。実際に,教える現場からの中継なのだ。なので,教え方の工夫が凝らされる。それは,身体技能の習得のコツを伝えることととても似ている。通り一遍じゃ伝わりにくいことだったり,ひたすら量を暗記して答えられるようになることじゃなく,「わかった!」と思わず口に出てしまう体験が得られるはずだ。
 法律や法律どうしの構造をわかってもらおうとすること,原義や英語やドイツ語の原典を示して理解につなげようとすることなど,石川先生のサービス精神があふれる。闇雲に覚えることが多かった行政法の世界が違って見えるようになる人も多いはずだ。行政法を学ぶ者は,いつでも眺められるように書棚の手に取れる場所に置くべき本だ。