読書感想文「体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉」伊藤 亜紗 (著)

 脳と体と意識の研究最前線である。
 「体を動かそうとしているのは頭だとして,頭で思ったとおりには動いていない体を動かしているのは頭以外の何なのだ?問題」なのだ。できていない,という結果はあるのだ。できている像が頭に描けておらず,かつ,そのぼんやりとした像をもとにどう体を動かすと「できる」となるのか,いや,そうじゃない。適切な信号が送れていないのだ。という仕組みが,実証的に掴め始めている。測定可能になってきている。見えるようになってきている。そして,意識とは別に体を動かすことが捉えられるようになってきている。脳そのものもわかるようになってきたし,意識の下で,いや意識の上書きような状態で起きていることもわかり始めている。いま,研究者はそこにいる。
 ハイテクが扱いにくい(と勝手に思ってた)はずの身体と感覚の捉えどころのあやふやなものを相手にすることができるようになって,理解力や練習量じゃなく,動作を身につける=新たな体の動かし方を会得することができる時代が来る。ということは,所作を身につけたり,介護を受けるようになった体を動かないなりに自律した生活をさせるようにすることが,今まで全く違うメソッドで実現するはずだ。
 体って,頭って何だ?とウンウン唸りながら,読書するのだ。頭蓋骨の内側で汗をかく本だ。