読書感想文「考える教室 大人のための哲学入門」若松 英輔 (著)

 「知」あるいは「わからない」ということへの謙虚さについての本だ。その実は,態度についての本である。ここでの態度とは,モノゴトについて考えるための姿勢のことだ。
 「立て板に水」でパパパァーッと威勢よく言い切ってしまう人はカッコいい。ヨッ!と掛け声のひとつも出したくなる。だが,そんな場面がリアルの世界であるだろうか。まぁ,あるにはあるのだが,たいてい,断言してしまったところで,その場のおかしな空気をどう収めるかにメンバーがヤレヤレと両手を上げてしまうことになる。ストンと落ちることなんてそうそう無いからだ。落としどころを探りながら,とりあえず妥協案を紡ぐのだ。
 僕たちはこの僅か100ページ余りの本を通じて,若松英輔の態度を学ぶ。そして,僕らは何かについて考えるとき,若松の朴訥さとともにある真剣な熱の存在を思い返すといい。
 知そのものや情報は,溢れる。多過ぎて手に負えない。その一方で,学ぶ態度,姿勢は教わらない。さぁ,わからなさの世界へ入門だ。